ガラパゴスからの船出

時代の潮流から随分外れた島に浮かぶ音楽ブログです。お気に入りの曲(2000年代後半が多め)の感想や好きな部分をひたすら垂れ流します。

Tommy february⁶/BE MY VALENTINE

2001年にソロデビューしたTommy february⁶は、私好みの80年代ユーロビートを3年ぐらいかけて次々にリリースしていったのだが、別名義であるTommy heavenly⁶の活動も忙しくなったためか、そこから音源の音沙汰がなくなってしまった(february⁶はポップで明るいけれどちょっと闇のあるキャラ設定だったのが、パンクでガッツリとダークなキャラクターのheavenly⁶を作ってしまったため、february⁶で闇を表現する必要がなくなり、活動が停滞していたのだとか)。

 

「まあそんなもんだよね」ぐらいに諦めていた2013年。Tommyの誕生日である2月6日に発表された曲がこの「BE MY VALENTINE」である。

それまでの曲を聴いてきたファンならわかるけれど、曲調がすごい変わったんですよ。さっきも書いたけれど、february⁶ってStock Aitken Watermanに影響を受けた80年代ユーロビートに、ガーリッシュなスパイスをかけたような曲調の曲を発表していたのよね。

 

ところがなぜか時代は逆行し、60年代モータウンビート風の曲をブチかましてきたのだ。従来のfebruary⁶で聴こえてきたアナログシンセの音は消え、リズム隊の音を前面に押し出し、甘いカッティングギターやエレピが響く。ハイハットの音は小さいが、代わりにセンターから聴こえるドラムマシンのタンバリンのような音がリズムを軽快に刻み続ける。

 

でも世界観は相変わらずあの時のfebruary⁶で、そしてそれが曲調にマッチしてとんでもなく可愛いのだから、ファンとしてはテンション爆上がりだったのだ!サビの「ドキドキして立ち眩む 心地いい恋のめまい」の所、さりげなく小室進行を使っていたりと、モータウンでありがなら、J-POP的な展開があって、やっぱりfebruary⁶はいいなあと思ったわけですよ。

 

さてこの曲は2番サビ後の間奏の部分で、Tommyの語りが入るのが特徴的。内容を要約すると「気になる彼に彼女ができたらしい!でも私はバレンタインにこの想いを伝えるんだ!」と自分に言い聞かせるTommy。

 

そこに謎の男が登場して「やあTommy、元気?」と声をかけてくる。Tommyが「Ohhhh! I'm fine! I think maybe I was daydreaming!」と慌てて返事をするのだから、この男が愛しの彼なのかなと思ったら「こうやってチョコレートに気持ちを込めて彼にアタックするんだ!」と、アドバイスをしてくる。え、コイツ彼じゃなかったの?友人ポジション?

 

cro-magnon/逆襲のテーマ

90年代の話になるんだけど、Loop Junktionというヒップホップジャズユニットがいたんですよ。活動休止してからそのバックバンドだけがインストゥルメンタルバンドを結成した。それがcro-magnonである。

 

で、そのデビューアルバムのリード曲「逆襲のテーマ」が、なかなかハマるのです。

本当はシュールなPVがあるんだけどどこにも上がってないのよね

ヒップホップ出身だけあってか、同じフレーズを繰り返す部分が多い。だけれど、ねっとりとした主張の強いベースを始めとして、特徴的なシンセリフが心を掴んでくるんです。1:00ぐらいからホーンセクションも入ってきて、エレピもあって、このグルーヴィーさは、もはやジャズなんですよね。だけどドラムが一貫して四つ打ちなので、首を縦に振って踊れてしまったりもする。このあたりに様々なジャンルが彼らのバックグラウンドにあることが窺えるし、デビューアルバムから彼らのキャリアを感じさせずにはいられない。

 

そしてこの曲、ライブの音源のほうが圧倒的に完成度が高い。


いとうかなこ/追想のディスペア

私が「ひぐらしく頃に」シリーズを知ったのはAT-Xの番組表なんですよ。スカパーのパックみたいなのに入っていない、別料金のアニメチャンネル。そこにR-15指定で番組情報が載っていたから気になったところから始まりましてね。そして本屋に行ったら可愛い女の子のイラストの漫画が置かれていて、「え?このタッチでなんか怖いやつなの?」と興味を持ったものでした。

 

しばらくするとアニメが放送されて、ただ「ひぐらしく頃に解」からうっかり見ちゃったため、この作品の醍醐味はもう8割方失われちゃったんですが、それでもしっかり怖い展開を味わわされたため、しばらくビビっておりました…。

 

そこから少し年月が経って、その噂の「ひぐらし」がニンテンドーDSで発売されて、じゃあこれはやってみるかとプレイしたのが、「ひぐらしく頃に」でした。そこで味わった「鬼隠し編」の怖さときたら…。しばらくシャワー浴びてる時も、後ろをチラッと振り返ったりね。祟りですかね。

 

前置きはさておき、そんな「絆」の第一巻「祟」の主題歌が「追想のディスペア」です。

ネタバレは避けながら書いていくが、「ひぐらし」は閉鎖的な村社会の「祟り」や「呪い」をテーマにしたサスペンスホラーだからか、和のテイスティングがするんだけど、使ってる楽器が全然和風ではないのよね。横笛っぽい音はあるけれど、特徴的なパーカッションはたぶんコンガだし(素材のループだと思うけど)、ギターやドラムやベースなど、リズムは四つ打ちで編成は普通にロックだし、オケヒやシンセの音はガンガンに使ってるし。つまりこれラテンロックですね。でも、ひぐらしの持つ怪奇的な世界観をなぜか損なわない不思議。「アイヤエエーオーアイヨー」のインパクトが強いのもあるのかな。いや~、こういう曲は(志倉)千代丸にしか書けないよね。

 

そして歌詞の不気味さときたら。登場人物が味わった惨劇を、あるキャラクターの視点で振り返る感じの歌詞なのかな。「屋上に空があった 風も、熱も、夢も、明日も」に感じる爽やかな思い出が全部音を立てて崩れていく、まさに「ひぐらし」本編の狂気を歌っているんですよね。「数え切れぬ程の瞳が全部笑ったら」や「訝る暗鬼 真昼の狂気は口元が不自然に引きつったまま」なんてのは、あのキャラのあのシーンかな、とか。「爪で搔きむしる」の部分はそのまんまだし。

 

「海に落ち込んだ 箱詰めのクオーク」あたりがもう千代丸節ですよね。そしてここに作品の全てが詰まっているんだろうなと、全部プレイした今では感じることができる。この原作リスペクトの作詞力がやはり千代丸なんですよ。本当に凄い。

 

そもそも曲名が「追想のディスペア」だから、どのルートを歩んでも絶望的な展開に終わる第一巻「祟」に相応しいタイトルだと思うし、ひぐらしのおどろおどろしい世界観を十二分に表現した名曲であるといえますよね。

 

そういえば私は2年前に聖地巡礼してきているんですよ。巡礼目的というよりかは、単純に白川郷を見るのが目的だったんですけどね。それでもゲームの背景の建物があると「おおっ!」とならずにはいられない。

上まで登って後ろを振り返ったらですね

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レナいるかな?かな…?

電気グルーヴ×スチャダラパー/Twilight

石野卓球氏を知ってから、逆流するかのように電気グルーヴ(以下電気)のアルバムも掘るようになった。そんな中見つけたのが、電気とスチャダラパーのコラボである「Twilight」だ。

PVの意味はさっぱりわからない(誉め言葉)

なんとまあキラキラした曲だろう。イントロのアコギとアナログシンセのバッキングに、TR-808のタムっぽい音や宇宙っぽFXが入り、この曲は始まる。

 

ラップはスチャダラのBOSEとANIが担当しているんだけど、トラックが完全に電気寄りなのよね。調べたら編曲は砂原良徳氏みたい。

 

サビはまた一段と華やかで、卓球氏の張りのある高い声にストリングスが混ざる。同じくTR-808のオープンハイハットみたいな音や、2小節に1個しか置かれないクラップなど、色んな音がネオンライトのように散りばめられていて、テクノとハウスの中間をゆらゆらとしている、そんな感じ。

 

推しポイントは、Cメロの「光り出す空~」の部分。スネアも偶数拍にきちんと置かれているし、卓球氏は高らかに歌うしで、聴いていて一番楽しい部分なのよね。その後の急に音が少なくなるところも、宇宙感マシマシで良き。

別バージョンのPV。やはり意味がわからない

DragonForce/Heroes of Our Time

DragonForce(以下ドラフォ)の最高傑作であると私が考えているのが、この「Heroes of Our Time」だ。

腕を回してジャンプしたり、カオスパッドを操りまくったりと、Vadimがとにかく楽しそう

この曲はアルバム「Ultra Beatdown」のリード曲なんだけど、アルバム自体が非常に良くできていた。1stの「Valley of the Damned」から始まったドラフォの持つ叙情的なパワーメタルの世界観はこのアルバムで完成したし(次のアルバムから少し違う世界観に入った)、初期の頃は弱かったボーカルのZP Theartの声も磨かれて迫力が満ち満ちたりと、作品を待っていたファンの予想を上回るものに仕上がっていた。

 

開始8秒でトレモロアームの音が鳴ると、Aメロに入る。ここまでDmのコードで進んできたのに、急にBmに上がっていく。この展開の仕方は一つ前のアルバム「Inhuman Rampage」のリード曲である「Operation Ground and Pound」と同じであり、Sam Totmanらしい流れなのだが、ZPが伸び伸びと歌うところが大きく違う。またあちらの曲は割と東洋的な曲調なのだが、こちらはそうでもないという、今まであったようでなかったような不思議な感覚をここで覚える。

 

そしてBメロ。なんとボーカルとキーボード以外の音がピタっと止まり、コーラスを響かせる。これ今までのドラフォでは(確か)無かったことなんですよ。ドラフォと言ったら初めから終わりまで超高速でビートが鳴り続ける曲でアルバムが埋め尽くされているんですよね。それがここでブレイクダウンを入れてくるんだから、今までを知るファンからすれば驚いたのなんのって。もしかしてアルバムのタイトルはこういうことを指すのだろうか?などと思ったものです。でもちゃんとBメロ前半終わりからギターが頑張り、キックのツインペダルが忙しなく動き、徐々にスピードを戻していく。

 

そこから入るサビのカッコ良さたるや!急にメジャーコードだらけになるSamらしさ全開のサビだが、ここにも今までと違う所がある。Samが書いた曲なのに、Vadimのシンセの音が目立っているのだ。過去にもシンセの音が目立つ曲はあるのだが、それは大体Vadimが書いていたりするからで、Samの曲でここまでシンセ音が鳴るサビは初めてじゃないだろうか。でも、雲の上へ突き抜けていくようなSamの美しいメロディラインに、Vadimのキラキラしたシンセの音が丁度良い塩梅で合わさり、最高のサビに仕上がっている。そして「Rise above the universe tonight」の所で再びコーラスだけになり、タムがドン!と鳴って「Starchaser…」と締める、完璧な流れである。

 

2番も秀逸な出来であり、BメロがCメロのような別のメロになっていながら、サビへ徐々にヒートアップしていく展開など、1番を超えた構成に仕上がっている。「なんて名曲なんだろう…」とラスサビを聴いていたら、アウトロの部分で急にゆったりとコーラスを響かせてくるではないか…!先述のように、ドラフォは最後まで猛スピードで走り抜けていくバンドである。ところがこの曲は、走り終わった人をガシっと抱擁するような力強い展開で終幕を迎えるのだ。

 

ドラフォはこの後からボーカルを含めたメンバーや、アルバムの世界観がどんどん変わり、また別の世界を走り回っていくことになる。だからこそ、このアルバムのこの曲は、初期ドラフォが目指した山の頂なんじゃないかなあと私は思うのだ。

eastern youth/夏の日の午後

eastern youthのことを知ったのはいつだったろうか。気が付いたらアルバムを持っていたバンドだったりする。初めて聴いたのがこの「夏の日の午後」だったことは覚えている。

このなんとも言えない日本感たるや。決して和風じゃないんですよね。昭和日本の夏なんですよ。MVの昭和の風景はもちろん加味されるんだけど、それ抜きにしてもすごい。

 

口笛とギターが小さく聴こえ、40秒ぐらいしてから始まるイントロ。ドンドンと叩かれる重厚なタムや、ギラつく日光を思わせるようなノイジーなギターが鳴る。もうここのパートだけで「夏の日の午後」が完成してしまっている。茹だるような暑さ、昇る陽炎、遠くから聴こえるセミの声、少し湿った匂い、全てが地面からニョキニョキと生えてくるようだ。

 

Aメロは二つぐらいしかコードを使っていないだろう。そしてメロディーはC#m7の音だけで構成されている。途中からブンブンと鳴るベースが入り、偶数拍を強調するギターのリズムがパンクに響く。歌詞はどこか罪というか後ろめたさを抱えた人が、背中に太陽を焼きつけながら、ただひたすらに歩いていく様子。

 

Aメロの最後で急に明るくBのコードが鳴り、サビでEに移る。シンプルだけどすごく綺麗。サビまでメロディーを取って気づいたんだけど、意図的なものかはわからないが、この曲はほとんど「民謡音階」で作られているんですよね。細かい説明は割愛するけれど、わらべ歌とかに使われている音階。だからこの曲は郷愁の念が沸き上がるような想いを抱かせてくれるのだろう。

 

そして歌詞では昼の暑さから俄雨や雷雨も降り、夕陽が沈み夜になっていく風景が描かれる。「振り返るな」という言葉は、最初の後ろめたさに対してだろうか。ただひたすらに前を見て歩いていかなければならない、そんな覚悟を感じる。だからなのか、私にはこの曲が"業の肯定"に聴こえる。罪を許しはしないけれど、それが人間だと肯定しているかのような。罪というと重く感じるが、たとえば子どもが虫を潰してしまったとか、軽いいたずらで誰かをケガさせてしまったとか、その程度のものかもしれない。自分だけがその罪を知っていて、後ろめたさを抱えてすごす夏の日の午後。そんな子ども時代の"業"だからこそ、郷愁の念を抱かせる民謡音階で仕上げたのだろうか。

渚ようこ duet with 半田健人/かっこいいブーガルー

かつてクレイジーケンバンド渚ようこ氏をゲストに迎え入れ、「かっこいいブーガルー」という曲を発表した。歌謡曲テイスト溢れる名曲なのだが、それを歌謡曲大好き半田健人氏がカバーしたのがこの曲である。

PVのロケ地が巣鴨やら浅草やらっていう、もうバリバリの昭和テイストリスペクトが感じられる。そんな曲が2006年に作られるんだもの。イントロはビブラスラップで始まり、流れてくる昭和風ナレーションとテロップ。この音声はCDには収録されていないのが勿体なかったりする。

 

原曲はドラムが打ち込みで、ボサノヴァのリズムのラテン風味な曲なのだが、カヴァー版は生ドラムにトランペットやサックスが入ることで、より昭和レトロな楽曲に仕上がっている。このアレンジが凄い。

 

また原曲では横山剣氏の渋く声量のある声がメインとなり、渚氏の声はコーラスのようになっているが、カヴァー版は半田氏の若々しくも甘い声をしっかり支えながら、それでいて存在感を発揮しており、丁度よいバランスになっていたりする。先人の楽曲に自身の声を乗せて歌う若者に、「一緒に頑張ろう」と優しく手を差し伸べる先輩の声なのだ。

ちなみに半田氏は、今でもライブでこの曲を歌っているそうだ。きっとその声は、リリースしたばかりの若くて甘いものではなく、熟成された渋さ溢れるものになっているに違いない。