ガラパゴスからの船出

時代の潮流から随分外れた島に浮かぶ音楽ブログです。お気に入りの曲(2000年代後半が多め)の感想や好きな部分をひたすら垂れ流します。

フジファブリック/銀河

f:id:majaraka:20210409224309j:plain

私のカラオケデビューは随分遅かった。大学に入るか入らないかぐらいだった気がする。人前で歌うことに抵抗があり、なんだか恥ずかしかったのだ。しかし高校の同級生に連れられて一度行ってみると、これが面白い。以降色んな人たちとカラオケへ行っては、好きな歌を歌う楽しみを味わい、人の選曲に人生を感じて聞き入るなど、一つ遊びを覚えてしまった。そんな最初期の私がよく歌っていたのがフジファブリックの曲である。

 

このブログを始めて気づいたのが、チョイスするミュージシャンが、もはや活動していないor近況報告のない人たちばかりだった。わざとそうしているわけではなく、自分の人生のターニングポイント的な人たちを選んでいたら、たまたまそうなったのである。そんな中ここにきてようやく、今も活動しているバンドの登場である。

 

もっともこのバンドのフロントマンである志村正彦は2009年に急死している。そこからよく存続していると思う。志村死後のフジファブリックの曲は私も聴くが、やはり志村の書いた曲は凄まじかった。その凄さを一番わかっているのがバンドメンバーであるだろうに、今でも灯を絶やさないのがすごい。

 

カラオケにハマる1~2年ぐらい前に私はフジファブリックを知った。そのきっかけとなったのがタイトルの「銀河」という曲だ。

SPACE SHOWER MUSIC AWARDS 2006にもノミネートされていた覚えがある

一発で引き込まれる曲というのは、こういうものを指すのだと思う。曲も歌詞も不可思議感がハンパない。メロディーからなんとなく昭和歌謡っぽさを感じるのは私だけではないはずだ。それなのに編曲がオルガンを除いて全然歌謡っぽくない。チキチキとなるハイハット。ワウを効かせたギターは、これまた特徴的なリフを奏でる。サビのドラムフレーズは、あまりサビで聴かないタイプのグルーブだ。このアンバランスさが独特な違和感を生んで、曲の不可思議さを演出しているのだろう。

 

歌詞も何を言っているのかわからない。これは文字で見るとわかるが、擬音がやたら多い。歌謡曲なのに擬音だらけというのも面白い。小学生の国語の教科書に出てきそうな歌詞だと思う。口ずさんでみると妙に心地よいのだ。

 

そして何よりPVの奇妙さ。主人公の女の子をやたらと追いかける少女たち。彼女らは主人公を見つけると踊りだす。まるで意味がわからない。一体彼女たちはなんなのか。なぜ深夜2時すぎに踊りだすのか。これら曲・歌詞・PVの三つがそれぞれ高いクオリティの個性を主張した結果、見聞きする者に浮遊感を抱かせ、すなわちそれが宇宙=銀河だとでも言いたいのだろうか。だとしたら私はまんまと術中にハマってしまったことになる。よくもまあこんな曲を作れるものだ。

 

うろ覚えだが、この曲から私はフジファブリックを知っただけではなく、スペースシャワーやMTVなどで音楽を漁るようになったと思う。つまり私の中の音楽的ビッグバンを生み出した曲の一つでもあるのだ。

 

しかし私はあまり銀河を歌わない。「虹」とか「Sugar!!」とか「若者のすべて」とか「赤黄色の金木犀」とかのほうが盛り上がるからだ。この曲はカラオケのオールで皆が疲れてウトウトしてきた深夜2時すぎに、コッソリと歌うのに限る。ふと気づいた誰かがいたら、ソイツにだけ届けばよい。宇宙がまた一つ広がった瞬間だ。