ガラパゴスからの船出

時代の潮流から随分外れた島に浮かぶ音楽ブログです。お気に入りの曲(2000年代後半が多め)の感想や好きな部分をひたすら垂れ流します。

DeviceHigh/イノセント・ブルー

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ぽぽーぽぽ

 

もはや存在が伝説となっているアニメ「School Days」。私は最終話の少し前に、このアニメを見つけた。内容の評判などではなく、「こんな時間にアニメやってんの?見てみるか」といった、当時テレビ大阪での放送枠の中でも28:05~という最も遅い時間帯(もはや早朝)に位置していたそのアニメに興味を持ったためである。そしてその内容のドロドロ加減に惹かれていった。そんな中、最終回で起こったのがNice boat.の事件である。

 

さてこのアニメ、ゲームでも使われている「悲しみの向こうへ」があまりにも有名だが、私はOPのこの曲が大好きだ。巷では「OP詐欺」などと言われており、それに関しては同意なのだが、純粋に曲としてのクオリティが高い。最初に聴いた時は何とも思わなかったが、DVD販促のCMでこの曲を何度も聴いているうちに、いつの間にかハマってしまったパターンだ。

この曲を語る上で欠かせないのが、DeviceHighというグループについてだ。ボーカルのREM氏(通称「れむにゃん」)と、コンポーザーの橋本彦士氏によって構成されている。結成初期は作曲陣に中村繁一氏がいて、ライブにも出演していたのだが、いつからか脱退している(2010年前後までは交流が確認できている)。このグループはそれまでアニソンを担当するということはなかったのだが、「このアニメの元となっている原作のゲームをよく知り尽くしている」ということで選ばれたようだ。原作ではDeviceHighに良く似た声と曲調の別ユニットがBGMや主題歌を担当していたのだが、これに関しては公式に説明がなされていないため、知らないフリをしておくのが大人というものである。なんのことかわからない人は、調べてみてください。

 

そんなDeviceHighが送るイノセント・ブルーであるが、まず曲調のオシャレさが耳を引く。ジャンルでいうとドラムンベースが一番近いのだろうか。軽快なドラムビートに存在感の強いシンセベースライン。2007年のアニソンでこんなオシャレなことをするのかと驚いたものだ。また音色の数が多い。様々な音が所狭しと散りばめられているが、それぞれがかき消し合うこともなく、太い低音の上で煌びやかに輝いている。この曲自体がまるでクリスマスツリーのようだ。そしてDeviceHighの他の曲を聴けばわかるが、彼らはドラムもベースも軽めの音を使うことが多い。音の数は特に少ないわけでもないが、比較的近い音色のシンセが多用される。つまり今までDeviceHighを聴いてきた人からしても、この曲は彼らのさらなる奥深さを発見した一曲だったのではないか。メジャーデビューにおける橋本氏の並々ならぬ気合を感じずにはいられない。もうすでに消滅している橋本氏の昔のブログで、かつてこの曲の「ぽぽーぽぽ」の部分を配布していたことを、私はよく覚えている。

 

一方で“橋本節”もしっかりと見られる。これも彼らの曲を聴き続けるとわかるのだが、橋本氏は一番盛り上がる直前で間奏を入れる傾向がある(昔のブログで本人も言及しており、意図的にやっているようだ)。上の動画でいうと2:41~。Bメロが終わってサビへ向かう…!というところで8小節の間奏が入る。文章だけで見れば、話の腰を折るような意味のわからない技術に思えるかもしれないが、なぜか盛り下がったりせず、それどころかBメロやサビにスムーズに繋がり、結果的に更なる盛り上がりを生むのである。これをメジャーでもきちんとやってくれたため、ファンはニヤリとしただろう。

 

この曲をきっかけに、私は彼らの音源を掘るようになった。そして彼らの活動を応援していたのだが、2011年に彼らは活動を休止してしまう。少し調べればわかるのだが、れむにゃんが歌えなくなってしまったのだ。それから橋本氏の動向をたまに追っていたが、10年経った今も活動再開は難しそうである。ただ最近、れむにゃんもTwitterを始めていたようで、元気な姿を確認できただけでもホッとした。バッドエンドが有名になるのはアニメの中だけでいい。