ガラパゴスからの船出

時代の潮流から随分外れた島に浮かぶ音楽ブログです。お気に入りの曲(2000年代後半が多め)の感想や好きな部分をひたすら垂れ流します。

YMCK/果てしない世界

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チップチューンというジャンルを、私はYMCKから知った。

 

アラド戦記というゲームがあり、そのアニメが2009年に放送された。いつものごとくアニメ本編には全くハマらず、曲のほうにかじりついていた私であったが、そのEDがこれまた独特なジャンルだった。

 

チップチューンというものは、そして8bitのアニメーションというのは、どうしてこうも気持ちをワクワクさせるのだろうか。到底リアルな表現ができない中でどうやって広大な世界を作り上げることができるのか、というロマンが心を動かすのだろうか。ドットゲーで育ってこなかった今の子どもたちも同じロマンを抱くのだろうか。疑問は尽きない。

 

さてこの「果てしない世界」という曲だが、もうチップチューンでなければ成立しえない曲である。他のリアルな楽器を使ったり、最新のシンセではこの曲のロマンは醸し出せないだろう。イントロの何かが始まるワクワク感は、新しいゲームを買ってきて、初めてハードに差し込む瞬間を彷彿とさせる。Aメロはイントロの延長線上の展開で、ワクワク感がずっと続いている。Bメロは、それこそEDのアニメーションにも出てくる、天を衝く塔に上っていくような雰囲気が、上昇していくアルペジエーターのかかった音から窺える。

 

巻き舌のような音とでもいうのだろうか、サビで聴こえる音は、もうなんと字で表したら良いかわからない。サビに限った話ではないが、ボーカルの栗原みどり氏のウィスパーボイスはチップチューンとの相性が抜群である。以前何かの記事で読んだのだが、このボーカルにはリバーブをかけていないのだとか。DTMをやる自分からするとなかなかに衝撃的だった。

 

DTMといえば、メンバーの除村武志氏の開発したソフトシンセを語らないわけにはいかない。「Magical 8bit Plug」というファミコン音源を再現したシンセである。もう10年以上前にUIすら存在しない無骨なソフトシンセとして発表され、実機に近づいたノイジーな音が魅力的で、2020年にはまさかのバージョン2が出て巷を驚かせた一品である。当時お金のない学生だった私はフリーシンセを漁っており、このシンセに出会った。出せる音は非常に少ないのだが、謎の万能感に胸が高鳴った(同時にYMCKの曲を聴いて「どうやったらこういうmidiを打ち込めるんだ…?」と絶望したが)。

 

こうしてチップチューンと出会った私だが、実は他のチップチューンミュージシャンには詳しくない。私の音楽フォルダにもほとんど曲がない。つまり私はチップチューンが好きというよりかは、YMCKの曲が好きなのだ。

 

なおこのEDのアニメーションは、YMCKのメンバーである中村氏が作っているのだとか。どこまで8bitに造詣が深いグループなのだろうか…