ガラパゴスからの船出

時代の潮流から随分外れた島に浮かぶ音楽ブログです。お気に入りの曲(2000年代後半が多め)の感想や好きな部分をひたすら垂れ流します。

山下達郎/ヘロン

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山下達郎の曲を初めて聴いたのは、ポンキッキーズのEDだった「パレード」なのだが、誰が歌っていたのか知ったのは随分後のことだった。“山下達郎の歌”として認識したのは、このヘロンが最初なのだと思う。

多分CMでPVを見たのかな。「速報!歌の大辞テン」でも見ていたかと思う。とにかくとんでもなくインパクトのある映像だった。「♪ヘーロン」と、急に音が低くなるところも個人的に耳に残った部分だ。父がマネをして口ずさんでいたのを聴いて「そんな低くないよ!」と言った覚えがあるが、実際低いよね。

 

調べたらヘロンとはアオサギのことで、鳴くと雨が降るので「泣かないでヘロン」ということらしい。というわけでこのPVで真っ青な出で立ちで踊っている人はアオサギなのだ。いや、わからん。

 

コード進行は非常にシンプルだ。たまに小洒落たコードを挟むが、一つのコードが2小節続くことも多く、わかりやすいものとなっている。イントロから鳴る大量のカスタネットは、それこそアオサギの嘴を表現しているのだろうか。パーカッションの数が多く、エレピやギター、モータウンビートのドラムなど、とにかく音が大量に響くのが特徴で、山下達郎のウォール・オブ・サウンド真骨頂の曲である。

 

歌詞は哲学的ではあるものの、力強いものとなっている。キリンビールCMのタイアップであり、そのキリンビール長野オリンピックのスポンサーだったので、応援歌に仕上げたのだろう。さりげなく「ニッポンチャチャチャ」のフレーズも入っている。しかしながら大声で燃え上がるように応援するという感じではなく、早朝の海岸でパチパチと燃える焚火のように、静かで孤独な熱を感じさせるものとなっている。「頑張れ」だとか「努力」という言葉を使わず、「心よ目を覚ませ 見果てぬ夢を数えながら もうすぐ夜明けが来る」「いつかきっと永遠をつかむその日まで」と語り、「流れる時に抗い命を燃やし続ける全ての孤独な人よ 涙は言霊になる」と元気づける。この勇気の籠る静けさたるやどうだろう。

どうでもいいのだが、私はこの曲に健康的なイメージがある。それがなぜか長年わからなかったが、この文章を書いている時に思い出せた。昔ヘルストロンの施設が地元にあり、これと名前が似ているからだ。しょうもないことを思い出してしまった。

 

さて今年は梅雨が長い。いつになったらヘロンは鳴くのを止めてくれるのだろうか。