ガラパゴスからの船出

時代の潮流から随分外れた島に浮かぶ音楽ブログです。お気に入りの曲(2000年代後半が多め)の感想や好きな部分をひたすら垂れ流します。

Every Little Thing/出逢った頃のように

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私はEvery Little Thingにそこまで思い入れがないのだが、私の思い出にはこのグループのサウンドが残っているし、音楽ライブラリにも多くの曲が入っている。その中でも最も私の好きな「出逢った頃のように」について書いてみよう。この曲を知ったきっかけはもはや覚えていないのだが、Wikiを見る限り「ICE BOX」のCMソングだったらしいので、恐らくそれなのだろう。

めっちゃ狭い通路でギターを弾くいっくんがシュール

サビから入るこの曲は、ボーカルとコーラス、ピアノにベルという煌びやかな音から始まる。間奏で連発されるオケヒに、ハードなエレキなどが加わる、90年代の美味しいところを詰め込んだような編成となる。変ト長調で楽譜がクッソ読みにくいところが、ちょっと困る。

 

Aメロ。といってもA→B→A→Bという構成に聴こえるのがこの曲。この部分が全体の中でも特に顕著なのだが、もろにビーイングの音(特にZARD)なんですよね。ギターのリフやメロディの運び方の織田哲郎氏っぽさが何とも言えない。それでいてオリジナリティを感じさせるのは、ボーカルの持田氏の持つ、ビーイングっぽくない高くてクリアな声質によるものが大きいだろう。

 

サビではシンセブラスも鳴り響く。ここでシンセブラスを持ってくるのも、ビーイングにはない部分であると個人的には思っている。織田哲郎氏はギタリストなのだが、この曲の作曲・編曲である五十嵐充氏はキーボーディストであり、それだからかELTらしい個性がここで光っているのかもしれない。

 

サビも含めてこの曲は、全体的にマイナーコードが多用されているが、歌詞の前向きさもあってか、暗さや悲しさのようなものは感じられず、移ろう感情や成熟しつつある心情などを表現しているように思える。またそれだからこそ合間合間で見られるメジャーコードがキラキラと輝いて見え、それはまるで雲の隙間から照らす太陽のようでもあるのだ。

 

そしてこのキラキラ感は、当時の持田氏のキャラクターそのものだ。目鼻立ちが整っているのに透明感のあるビジュアルに、先述のようなクリアな声。唯一無二の無敵のボーカルだと私は思っている。

 

ELTの音源を私が集め始めたのは、そこから二十年以上後のことになる。頭の中で鳴っていた古いフレーズを思い出す作業の一環として、ELTの曲にも手を伸ばしたのだ。その後は氷の入ったコップに水を入れるように、このグループの音が自然と脳内に溶けていった。「きっと色褪せないはずだよ」というのは、まさにその通りだと思った。