LOOK MUM NO COMPUTERを知ったのは、この記事を書いている数時間前。Sam Battleというミュージシャンのセルフプロジェクトである。モジュラーシンセを操ってライブを行う彼の動画がYouTubeのオススメに挙がってきて、偶然見つけたのだ。そしてそのインパクトのあるパフォーマンスと、少し懐かしいテクノやエレクトロハウスチックな曲調を気に入り、こうして記事を書くに至っている。
まず目を引くのが大きなモジュラーシンセ。「Kosmo Modular Synthesizer」という自作のシンセだそうで、曲によってモジュールを組み替えている様子が同氏のサイトから窺える。ArturiaのBeatstep ProやKORG MS-10もビジュアル的に良い味を出している。
イントロはパルス派のベースが軸となり、テクノ風味なシンセリフが浮遊感たっぷりに耳に入ってくる。YMOの「東風」を思い起こさせるレトロさが面白い。BECKの「Get Real Paid」なんかを彷彿とさせる魅力も感じる。ボーカルは意外にもオルタナティブなロック調なのだが、全くといっていいほど違和感がない。
サビの直前でMS-10のカットオフが捻られる。MS-10のうち一台はフィルターとして使っているようだ。そしてベースはハードさのあるブリブリとした音に変わり、曲の主役として存在感を示し始める。Samはマイクに向かって吠えるように歌い始める。クールなトラックに熱量のあるボーカルがたまらない。
曲全体を通してみればかなりシンプルな作りであるのだが、アナログシンセの生み出すグルーヴと不思議とエモーショナルなメロディーは新鮮で飽きさせず、何度も聴きたくなってしまう。良いミュージシャンを見つけてしまった。
音源バージョンもカッコいい。というかこっちのほうがしっかりとした作りになっている。
しかしモジュラーシンセってのはロマンがあるよなあ。私はKORG DS-10で初めてアナログシンセの仕組みを知り、大学二年の夏休みなんかはバイトもせず、部屋に籠ってモジュールを弄りパッチングをあれこれと試す暗い日々を送っていた。いつからか派手な音のするシンセや生音の音源を好むDTMerになってしまったので、アナログシンセのディープな世界を懐かしく思うと同時に、その道を究めるミュージシャンを見ると憧憬の念を抱かずにはいられなくなる。
なおこのSam Battle氏は一風変わったシンセを発明しており、そのマッドサイエンティストっぷりときたら開いた口が塞がらない。