ガラパゴスからの船出

時代の潮流から随分外れた島に浮かぶ音楽ブログです。お気に入りの曲(2000年代後半が多め)の感想や好きな部分をひたすら垂れ流します。

Noria/瞳のこたえ

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2009年のアニソンの中で、一位、二位を争うぐらい好きな曲がこの「瞳のこたえ」だ。「07-GHOST」という読売テレビで放映されていたアニメのEDであり、やはり私はこのアニメを見ていなかったのだが、アニソンチェックをしていた時に聴き入ってしまったのであった。

この曲を象徴するのはPVでも映っているバイオリンであり、イントロからその主役となる音を堪能することができる。全編にわたって聴こえるシンセパッドのような厚いコーラスも魅力的だ。使われているパーカッションはジャンベだろうか。響きのあるバスの音が水の重みを表しているようである。街の水路を進んでいくアニメーションがEDで使われていたことから、やはりそういう意味合いで使用しているのだろう。

 

Aメロから入るNoria氏の声は、高く透明感のある声なのだが、少し鼻にかかっていて幼げで優しさに満ち溢れた声。それでいて声優の声とも違う、あまり他にない独特なものであり、しかしながらこの曲にはこの声がベストなのだと思わせられる音なのだ。そしてよーく耳を澄ませると、シンセで作ったであろうガムランで見られるようなフレーズが聴こえてくる。この音がジャンベの音と交わって、より水面感を増幅させている。

 

このままアコースティックに進むかと思いきや、Bメロから入ってくるベースが高い音まで駆け上がって存在感をアピールし始める。グロッケン(っぽいシンセかな?)も入ってくるので、「ああ、この後盛り上がるための助走が始まったな」と思わせてくれる。歌詞はかなりネガティブで少し絶望的なものであるが、これもサビで希望の灯を強調するための対比となるフレーズなのだと考えられる。

 

まさかのエレキギターのスライドから始まるサビ。オブリガートを奏でるバイオリンは、さながら主人公の周りをフワフワと飛び回る妖精のようだ。今までの楽器が勢ぞろいし、ハイハットの音まで入ってきて、アンプラグドな音とバンド編成の音とが調和し、優しくも力強い壮大なサビが完成している。そしてその優しさと力強さは歌詞にも表れており、絶望に打ちひしがれた心に、浸透していくようなジンワリとした温かさが満ち溢れている。その温かさがあるから、人は希望に向かって進んでいけるというメッセージ性が感じられる。

 

この歌詞はNoria氏自身が書いており、曲は五十嵐“IGAO”淳一氏が作っている。このコンビの曲に「お先にシルブプレ」というものもあり、私はこの曲も好きなのでいずれレビューを書こうと思っている。サビのあたりのコード進行には「瞳のこたえ」と似た部分があり、そこがたまらなく良い部分なので、自分はこの進行が好きなんだなあと実感した。一方で文語体である本曲の歌詞とは真逆で、「お先にシルブプレ」の歌詞は口語体なところが可愛くて仕方ない。どちらの歌詞も素敵に書きこなすNoria氏の作詞センスは素晴らしい。

 

私が10年以上使い続けているウォークマンにはアルバム名順に曲を並べ替えて再生してくれる機能がある。Noria氏はアルバムを出していないので、この曲のアルバム名をとりあえず「07-GHOST」としているのだが、すると全ての曲の中で真っ先にこの曲が再生される。このソート基準はウォークマン独自のものなので、他のプレーヤーで並び変えるとこうはならない。したがって私がこのウォークマンを使い続ける限り、小さな灯としてずっと先導役を買って出てくれるのだ。