ガラパゴスからの船出

時代の潮流から随分外れた島に浮かぶ音楽ブログです。お気に入りの曲(2000年代後半が多め)の感想や好きな部分をひたすら垂れ流します。

つのごうじ&ピタゴラス/ゴマゴマゴーマ

五星戦隊ダイレンジャーは、1993年に放送された戦隊モノで、中華をテーマに作られたオリエンタルな味付けが特徴だった。主人公も龍や麒麟などの中国の伝説の生き物をモチーフにしているし、格闘技は中国拳法だし、必殺技も全部漢字だし、主人公チームの博士的ポジションは「道士」だ。終盤で敵組織のボスが放伐によって代替わりするなど、大人になってから「これも中華思想だったのか…」とわかるような部分があるのも面白い。

 

正直あまり覚えていないジュウレンジャーと比べて、ダイレンジャーは今でも覚えていたりする。特に終盤でダイレンジャーの理解者道士嘉挧が、敵組織「ゴーマ」の幹部であり、ダイレンジャーたちを倒して変身能力を奪って裏切る展開にはショックを受けた。実は嘉挧は敵組織の穏健派であり、過激派の幹部シャダムとの戦いに勝ち、ゴーマを穏健な組織に改革して、平和な世の中を作ることが目的だった。しかしシャダムには勝てず、駆け付けたダイレンジャーに看取られて、嘉挧は最期を迎えた。このシーンに私は生まれて初めて、フィクションで涙を流した覚えがある。

 

ゴーマの幹部は全員泥人形で出来ており、悲鳴をあげながらそれがボロボロと崩れていく姿は幼少期の自分にとってトラウマだったし、最終回はダイレンジャーの孫たちが、新たなダイレンジャーとして戦っていたりと、とにかく記憶に残る戦隊モノだった。

 

さてそんなダイレンジャーの敵対勢力ゴーマのテーマソングが、つのごうじ&ピタゴラスの「ゴマゴマゴーマ」である。

ここまで中華がどうとか書いたが、なぜか曲調がヒップホップなのだ。恐らく人生で初めて聴いたラップがこの曲であるだろう。トラックはGファンクに近いだろうか。ファンクやソウルっぽさがバリバリに出ていて、イントロのホーンセクションやワウのかかったギターのカッティング、R&Bで聴くような色気たっぷりのシンセベース、ループするハモンドオルガンなど、編成があまりにもオシャレすぎる。Stevie Wonderの「Superstition」でもリスペクトしているのか?ってぐらいだ。悪のテーマソングは子どもに共感させてはいけないからといって、まさか曲調までアダルティーに仕上げてくるとは…。

 

そんな頭を振れて踊れてしまうトラックに乗せるラップは、子どものワガママやマナーの悪さ、だらしなさを肯定する、いかにも悪らしいものになっている。しかしその真意は、寄ってきた子どもを「地獄への生贄」にするためであり、自らを「黒い心を持つ」「邪悪の征服者」と言い、悪の本性を見せつけるのだ。恐ろしいワードであるが、なにせトラックがオシャレなので、その悪さもカッコいい。

 

一方で爬虫類などを好む子どもをダークサイドにしたりと、今にして思えば古い時代の偏見が感じられる部分もある。また「ギックリ腰」や「こむらがえり」を悪いものとして並べているが、ここだけどう見ても大人の苦しみである。一緒に聴いている大人を笑わせるために取り入れたのだろうか…。

 

とかくヒップホップはワル自慢が多いが、彼ら以上のギャングスタラップって存在しなし、今後も出てこないだろう。だって世界征服を企む悪の組織そのものなんだもん。

 

そういえば最終回は50年後の世界の話だったため、2043年の戦隊モノは「ダイレンジャー2」になるのだろう。それを見るまでゴーマに睨まれないよう、頑張って生きていこうと思っています。