ガラパゴスからの船出

時代の潮流から随分外れた島に浮かぶ音楽ブログです。お気に入りの曲(2000年代後半が多め)の感想や好きな部分をひたすら垂れ流します。

I THE TENDERNESS/BRUSH UP

I THE TENDERNESS(通称ITT)を知ったのはMTV Japanの「FRESH FLASH」という、メジャーデビューしたばかりのミュージシャンをPVとともに何組か紹介する番組だ。

 

FEROSとU-KIの2MCによるヒップホップユニットであり、アングラ感漂うゴリゴリのラッパーというよりはライトでJ-POP寄りな部類に入る。そもそもプロデュースをしているのがGIORGIO 13 CANCEMIというミュージシャンなのだが、この人の作る曲を聴く限りR&B系の音に精通しているようなので、彼らの音もまたそうなるのである。

もうね、ゼロ年代のJ-POPって感じがして好き!自分が多感な時期を過ごした頃の曲というのもあるんだけれど、一枚のフィルム越しにキラキラと眩しい光を見ている感じ。そして曲調はやっぱりR&B色が強い。イントロからワウの効いたギターと綺麗なストリングスのセッション。この二つの音は楽曲を通してずっと鳴り響いており、「鮮やかな光とflower」という希望に満ちたこの曲の軽快さと眩しさを象徴する音となっている。ラテンミュージックで使われるようなトライアングルやシェイカーのパーカッションはこの曲の持つ明るさを支えており、総じて楽くもエモーショナルなトラックに仕上がっている。

 

クリーンな声のU-KIと少しガラガラ声のKREVAという感じのFEROSのラップの掛け合いは聴いていて心地よい。特にU-KIはなかなか言葉の区切りが独特で、カラオケで歌おうと思うと割と難しいと思う。たとえばU-KIのヴァースである「不安定じゃないレース  そのステージから制し 乗りこなすcase by case」という二小節のうち、「不安定じゃない」の部分だけでほぼ一小節全部使っており、小節の終わりに急いで「case」と入れる慌ただしさ。また「選んだ道は自分だけの意思 一途に進み待ち受けてる」というフレーズの後に「虹色に輝く光とflower 目的それぞれ探す僕らは」とくるのだが、「意思」と「虹」で踏むために「虹」だけ前の小節に入れている。したがって次の小節が「色に輝く光とflower」で始まっているように聴こえるのだ(文章だとわかりにくいが聴いてもらえればわかると思う)。そしてそういう部分があちらこちらに見られるので、この曲を歌うのは難しいのだ。

 

と、ここまでU-KIのフロウについて語ったが、一番のパンチラインはFEROSの「そうさ誰もが磨けば光るダイヤの原石だ!! この世界で一つだけの限定版」だと思っている私である。

 

ITTは2008年に無期限活動休止に入り、その後のメンバーの音沙汰もないため実質解散状態だ。だかこの曲の残した軽快なトラックと前向きなリリックは、何者にもなれなかった頃の自分にとっての応援ソングであり、今も聴いて当時を懐かしむとともに、少しだけ当時の勇気を貰ったりしているのだ。