ガラパゴスからの船出

時代の潮流から随分外れた島に浮かぶ音楽ブログです。お気に入りの曲(2000年代後半が多め)の感想や好きな部分をひたすら垂れ流します。

電気グルーヴ×スチャダラパー/Twilight

石野卓球氏を知ってから、逆流するかのように電気グルーヴ(以下電気)のアルバムも掘るようになった。そんな中見つけたのが、電気とスチャダラパーのコラボである「Twilight」だ。

PVの意味はさっぱりわからない(誉め言葉)

なんとまあキラキラした曲だろう。イントロのアコギとアナログシンセのバッキングに、TR-808のタムっぽい音や宇宙っぽFXが入り、この曲は始まる。

 

ラップはスチャダラのBOSEとANIが担当しているんだけど、トラックが完全に電気寄りなのよね。調べたら編曲は砂原良徳氏みたい。

 

サビはまた一段と華やかで、卓球氏の張りのある高い声にストリングスが混ざる。同じくTR-808のオープンハイハットみたいな音や、2小節に1個しか置かれないクラップなど、色んな音がネオンライトのように散りばめられていて、テクノとハウスの中間をゆらゆらとしている、そんな感じ。

 

推しポイントは、Cメロの「光り出す空~」の部分。スネアも偶数拍にきちんと置かれているし、卓球氏は高らかに歌うしで、聴いていて一番楽しい部分なのよね。その後の急に音が少なくなるところも、宇宙感マシマシで良き。

別バージョンのPV。やはり意味がわからない

DragonForce/Heroes of Our Time

DragonForce(以下ドラフォ)の最高傑作であると私が考えているのが、この「Heroes of Our Time」だ。

腕を回してジャンプしたり、カオスパッドを操りまくったりと、Vadimがとにかく楽しそう

この曲はアルバム「Ultra Beatdown」のリード曲なんだけど、アルバム自体が非常に良くできていた。1stの「Valley of the Damned」から始まったドラフォの持つ叙情的なパワーメタルの世界観はこのアルバムで完成したし(次のアルバムから少し違う世界観に入った)、初期の頃は弱かったボーカルのZP Theartの声も磨かれて迫力が満ち満ちたりと、作品を待っていたファンの予想を上回るものに仕上がっていた。

 

開始8秒でトレモロアームの音が鳴ると、Aメロに入る。ここまでDmのコードで進んできたのに、急にBmに上がっていく。この展開の仕方は一つ前のアルバム「Inhuman Rampage」のリード曲である「Operation Ground and Pound」と同じであり、Sam Totmanらしい流れなのだが、ZPが伸び伸びと歌うところが大きく違う。またあちらの曲は割と東洋的な曲調なのだが、こちらはそうでもないという、今まであったようでなかったような不思議な感覚をここで覚える。

 

そしてBメロ。なんとボーカルとキーボード以外の音がピタっと止まり、コーラスを響かせる。これ今までのドラフォでは(確か)無かったことなんですよ。ドラフォと言ったら初めから終わりまで超高速でビートが鳴り続ける曲でアルバムが埋め尽くされているんですよね。それがここでブレイクダウンを入れてくるんだから、今までを知るファンからすれば驚いたのなんのって。もしかしてアルバムのタイトルはこういうことを指すのだろうか?などと思ったものです。でもちゃんとBメロ前半終わりからギターが頑張り、キックのツインペダルが忙しなく動き、徐々にスピードを戻していく。

 

そこから入るサビのカッコ良さたるや!急にメジャーコードだらけになるSamらしさ全開のサビだが、ここにも今までと違う所がある。Samが書いた曲なのに、Vadimのシンセの音が目立っているのだ。過去にもシンセの音が目立つ曲はあるのだが、それは大体Vadimが書いていたりするからで、Samの曲でここまでシンセ音が鳴るサビは初めてじゃないだろうか。でも、雲の上へ突き抜けていくようなSamの美しいメロディラインに、Vadimのキラキラしたシンセの音が丁度良い塩梅で合わさり、最高のサビに仕上がっている。そして「Rise above the universe tonight」の所で再びコーラスだけになり、タムがドン!と鳴って「Starchaser…」と締める、完璧な流れである。

 

2番も秀逸な出来であり、BメロがCメロのような別のメロになっていながら、サビへ徐々にヒートアップしていく展開など、1番を超えた構成に仕上がっている。「なんて名曲なんだろう…」とラスサビを聴いていたら、アウトロの部分で急にゆったりとコーラスを響かせてくるではないか…!先述のように、ドラフォは最後まで猛スピードで走り抜けていくバンドである。ところがこの曲は、走り終わった人をガシっと抱擁するような力強い展開で終幕を迎えるのだ。

 

ドラフォはこの後からボーカルを含めたメンバーや、アルバムの世界観がどんどん変わり、また別の世界を走り回っていくことになる。だからこそ、このアルバムのこの曲は、初期ドラフォが目指した山の頂なんじゃないかなあと私は思うのだ。

eastern youth/夏の日の午後

eastern youthのことを知ったのはいつだったろうか。気が付いたらアルバムを持っていたバンドだったりする。初めて聴いたのがこの「夏の日の午後」だったことは覚えている。

このなんとも言えない日本感たるや。決して和風じゃないんですよね。昭和日本の夏なんですよ。MVの昭和の風景はもちろん加味されるんだけど、それ抜きにしてもすごい。

 

口笛とギターが小さく聴こえ、40秒ぐらいしてから始まるイントロ。ドンドンと叩かれる重厚なタムや、ギラつく日光を思わせるようなノイジーなギターが鳴る。もうここのパートだけで「夏の日の午後」が完成してしまっている。茹だるような暑さ、昇る陽炎、遠くから聴こえるセミの声、少し湿った匂い、全てが地面からニョキニョキと生えてくるようだ。

 

Aメロは二つぐらいしかコードを使っていないだろう。そしてメロディーはC#m7の音だけで構成されている。途中からブンブンと鳴るベースが入り、偶数拍を強調するギターのリズムがパンクに響く。歌詞はどこか罪というか後ろめたさを抱えた人が、背中に太陽を焼きつけながら、ただひたすらに歩いていく様子。

 

Aメロの最後で急に明るくBのコードが鳴り、サビでEに移る。シンプルだけどすごく綺麗。サビまでメロディーを取って気づいたんだけど、意図的なものかはわからないが、この曲はほとんど「民謡音階」で作られているんですよね。細かい説明は割愛するけれど、わらべ歌とかに使われている音階。だからこの曲は郷愁の念が沸き上がるような想いを抱かせてくれるのだろう。

 

そして歌詞では昼の暑さから俄雨や雷雨も降り、夕陽が沈み夜になっていく風景が描かれる。「振り返るな」という言葉は、最初の後ろめたさに対してだろうか。ただひたすらに前を見て歩いていかなければならない、そんな覚悟を感じる。だからなのか、私にはこの曲が"業の肯定"に聴こえる。罪を許しはしないけれど、それが人間だと肯定しているかのような。罪というと重く感じるが、たとえば子どもが虫を潰してしまったとか、軽いいたずらで誰かをケガさせてしまったとか、その程度のものかもしれない。自分だけがその罪を知っていて、後ろめたさを抱えてすごす夏の日の午後。そんな子ども時代の"業"だからこそ、郷愁の念を抱かせる民謡音階で仕上げたのだろうか。

渚ようこ duet with 半田健人/かっこいいブーガルー

かつてクレイジーケンバンド渚ようこ氏をゲストに迎え入れ、「かっこいいブーガルー」という曲を発表した。歌謡曲テイスト溢れる名曲なのだが、それを歌謡曲大好き半田健人氏がカバーしたのがこの曲である。

PVのロケ地が巣鴨やら浅草やらっていう、もうバリバリの昭和テイストリスペクトが感じられる。そんな曲が2006年に作られるんだもの。イントロはビブラスラップで始まり、流れてくる昭和風ナレーションとテロップ。この音声はCDには収録されていないのが勿体なかったりする。

 

原曲はドラムが打ち込みで、ボサノヴァのリズムのラテン風味な曲なのだが、カヴァー版は生ドラムにトランペットやサックスが入ることで、より昭和レトロな楽曲に仕上がっている。このアレンジが凄い。

 

また原曲では横山剣氏の渋く声量のある声がメインとなり、渚氏の声はコーラスのようになっているが、カヴァー版は半田氏の若々しくも甘い声をしっかり支えながら、それでいて存在感を発揮しており、丁度よいバランスになっていたりする。先人の楽曲に自身の声を乗せて歌う若者に、「一緒に頑張ろう」と優しく手を差し伸べる先輩の声なのだ。

ちなみに半田氏は、今でもライブでこの曲を歌っているそうだ。きっとその声は、リリースしたばかりの若くて甘いものではなく、熟成された渋さ溢れるものになっているに違いない。

fripSide NAO project!/あっせんぶる☆LOVE さんぶる

一期fripSideの別名義であるfripSide NAO project!(以下ナオプロ)。アルバム一枚とシングル一枚を出して一期が終了したので楽曲数は非常に少ないが、そのアルバム「Rabbit Syndrome」は、非常に高い完成度を誇っていた。そしてアルバムのリード曲がこの「あっせんぶる☆LOVE さんぶる」だ。

「姉はエロコミ編集者」というエロゲーのタイアップソングになったこの曲は、fripSideがいわゆる「萌えソング」の需要に応えて作った初の曲である。しかしそのクオリティはクールな曲ばかり作ってきたfripが、初めて世に放ったとは思えないクオリティに仕上がっているのがわかるだろう。事情を知らない人が聴いたら、「元々こういう曲作る人達でしょ?」と勘違いしてしまうに違いない。コンポーザーのsatも「神様が降りてきた時にしか出来ない名曲」と語るだけのことはある。

 

カウントダウンのようなシンセの単音からスイープ音が鳴り、いきなりサビに繋がっていく様子は、新しい世界へ飛び込んでいくナオプロの所信表明のようである。ノリを良くするためなのかスネアの音こそ小さめなのだが、この曲は最初から最後まで音の数が多い。バネのような音、ホイッスル、猫の声、その他シンセのFXなど効果音が所狭しと散りばめられており、「キラキラあふれるように!」という歌詞の通りの音作りになっている。それでいてディストーションのかかったギターソロだったりラスサビの転調だったりと、fripらしさも垣間見える。編曲にはsatと共にアラケンこと新井健史氏の名が。納得。

 

そして何よりこの曲最大の魅力は、やたらと可愛らしい歌詞だ。「Go Go!」「ぽわん!」「ハイハイ!」という、電波ソングでよく聞くようなフレーズがイントロから聞こえる。ナオプロから入った私は何とも思わなかったが、これfripから入った人にとっては衝撃的だったのではないだろうか。satはこんな歌詞も書けるのだなあと思っていたら、satと共に王様こと山下慎一狼氏の名が。納得。

 

このね、「作詞:山下慎一狼八木沼悟志」「編曲:八木沼悟志新井健史」っていうクレジット、一期frip好きには堪らない並びなんですよ。勝ち確なんですよ。一期fripが終わりnaoが独立して、そっちにアラケンと王様が付いていき、今ではアラケンも独立(?)して、もう見れないクレジットなんですよね。だからこそファンとしてはこの4人の新曲をまた聴きたかったりするんです。

 

とまあ、一時期狂ったように聴いていた曲であるので、思い入れは非常に強い故に、もうこの曲も聴けないんだなあと思っていたら、2017年の「fripSide LIVE TOUR 2016-2017 FINAL in Saitama Super Arena-Run for the 15th Anniversary-supported by animelo mix」で、この曲を披露したのだ!

「Decade」で再びnaoの声をsatの曲で聴けた喜びはあったのだが、まさかナオプロの曲をやるなんて思わないじゃないですか。二人が肩を組むところとかね、もう泣けますよね(´;ω;`)

LOONIE/虹

バンドやグループというものは、メンバーチェンジや音楽性を変えながら、移り変わることが多い。このLOONIEというグループも、またその一つである。

 

彼らは元々90~00年代に活動していた、ミクスチャーロックバンドの麻波25(mach25)のメンバーであった。2004年に解散した後、MCのPASSERとYUICHIがRYOを誘い、2MC+1ボーカルのLOONIEが誕生した。そしてその4年後、グループ名をキャラメルペッパーズに変え、“ウェディングソングを歌うGReeeeN”みたいな路線へと転向し、スマッシュヒットを収めた。

 

つまり今回紹介するLOONIEは、グループとしての過渡期というか迷走期というか、蛹のような不完全変態状態の音楽なのである。そう聞くと音楽性的に大したことがないようにも思うかもしれないが、私はこの蛹の時期の曲が一番美味しく思えたりする。

 

このグループはハッキリと顔を出すことが少なく、出てきても皆サングラスをかけていたりと、誰が誰かわかりにくく、PVではそれが顕著に表れている(そしてその路線はキャラメルペッパーズも同じ)。

虹がかかる青空に飛び出していく、この爽快感ときたらどうだろう!曲調はまさしくゼロ年代のポップなヒップホップであり、麻波25時代のノリの軽さが引き継がれていることがわかる。

「Making the road」なんかと雰囲気が近い

サビ(hook?)で爽やかに歌っているのがRYOである。唯一のシンガーポジションなのだが、時折巧みなフロウを操ってくる。Cメロの「あてもなくわけもなく 雨にうたれて」の辺りの流暢なフロウが堪らない。

 

小籔千豊氏の声のような低音ボイスがYUICHIだ。韻を硬めに踏むためか、「Life isあんがい結構 tricky 喜怒哀楽全込みです正直」「毎週ラップ更新コンマ何秒調子?行きやフリーにな」など、リリックが日本語の文章としてかなり異様なことになっている。それをサラリと歌いこなすテクニックが光っている。この人はそもそも麻波25の時はドラマーだったりする。

 

トラックメイカーも務めるPASSERのねっとりと絡む高音フロウも特徴的だ。そこまで韻にこだわっていないが、「君やれば出来る子」「ウラララ 川を越えてく彼方」など、ワードチョイスがかなり独特。そしてこの三人が細かいパッセージで掛け合いをするところが、多く見られるのもこの曲の魅力だったりする。

 

LOONIEはシングル2枚とアルバム1枚を出して活動休止。後は上述の通りに自分達の音楽性を確立して現在に至っている。麻波25キャラメルペッパーズも長いこと活動していたため、ある意味一番レアな時期の曲なのだが、やはり私が学生時代に聴いていた思い入れ補正が大きいんだよなあ。

The Muffs/Lucky Guy

このバンドを5ちゃんねるで誰かに教えてもらったのは、2020年2月3日。日付を覚えているのは、自分のTwitterにそうメモしてあるからだ。

 

ボーカル&ギターのKim Shattuckを中心とするこのバンドは、アメリカのロサンゼルスで1993年に結成されたパンクバンドである。曲調は至ってシンプルなバリバリのLAパンクであり、いつもワンピース姿のKimは、気だるげだけどシャウトも入ったパワフルな声で歌う。それがとても可愛いのだ。

 

そんなMuffsの曲から一つ、「Lucky Guy」を紹介したい。

曲調や歌い方、そしてPVからわかる初期衝動感!この曲の全てはBメロに詰まっていると思っていて、

 

And you know You have a thousand things in front of you

Doin' anything you like And takin' it easy

Is all you ever need to do

 

と歌っている。翻訳すると「目の前にはたくさんのものがあるのだから、好きなことをして気楽にいきましょう。それがすべきことよ」ということだ。これはバンドを結成したばかりのKim自身のスタンスそのものではないだろうか。キラキラとしたエネルギーを真正面に放つ感じ。輝き方がハンパない。

 

PVも見てもらえばわかるように、Ronnie Barnett演じる緑のレプラコーンが登場するのは「お前たちが欲しがっている金より良いものがあるぞ!」ということなのだろう。若きMuffsの下へ連れて行き、アメリカ経済を牛耳っているような爺さんを「これが本当に求めていたものでしょ?」とばかりに夢中にさせていく。なんてパンクなんだろう。

 

この曲を教えてもらった頃、私は胆嚢摘出手術を控えており、また転職をして新天地へ向かうことになっていた。つまるところ不安だらけだったわけだ。このポジティブでエネルギッシュな曲がどれだけ自分を元気づけてくれたことか(その時はあまり歌詞の意味もわかっていなかったけど…)。

 

さてKimであるが、2019年に亡くなってしまった。もう少し早く出会っておきたかったバンドの一つである。