
近年、シティ・ポップが流行っているとか。元々シティ・ポップは70~80年代の日本で、AORやソウル、フュージョンなど海外の洗練されたサウンドを吸収しながら独自に発展した音楽だったんだけど、なんとそれを更に再構築して当時の雰囲気を再現したアメリカ人ミュージシャンがいる。それがGinger Rootだ。
「ザ・トップテン」のような昭和末期のテレビ番組感、アナログ感たっぷりの色味の映像、アイドルっぽい動きの謎のボーカル。日本人からしたら衝撃のMVですよ。なにこれ。
80年代のアイドルをよく研究しているというか、振り付けにそういう要素が表れてるのよね。個人的にはTommy february⁶を思い出す(ファンだから)。もちろん音楽性は違うんだけど、どちらも過去のポップカルチャーを憧れのフィルター越しに再構築している感じがするのよ。
ただ音作りは不思議で、80年代の音を今の宅録で再現した感じ。ベースなんかはアグレッシブだし、デジタルシンセの柔らかい音やコンパクトにまとまったドラムの乾いた音も80年代っぽい。でもそれらをまとめてただ鳴らしているんじゃなくて、テレビやレコードを通して小さな部屋で聴いた音にしているような気がするんですよね。スタジオだったりリバーブだったりの響きがあまりない。だから80年代のようで、なんか違うような…という音になる。
でもそれは当たり前で、アメリカ人のGinger Rootからすれば過去という”時間”だけでなく、国という”空間”も超えているのである。だから日本人のイメージする80年代の音楽ともまた異なるものができあがるわけであり、「Loretta」は外国人にしか作れない曲になるんだよね。そこにGinger Rootが養ってきた音楽性も当然入るのだから、つまりこの曲は80年代シティ・ポップの再現ではなく、現代における80年代シティ・ポップの再構築になるんだと思う。だから懐かしくも新鮮で不思議な感覚を、我々日本人は味わうのではないだろうか。
時代が生み出した曲だとも言える。シティ・ポップがYouTubeやストリーミングによって世界中に広がって、その影響を受けたアメリカ人が新しい作品を作り上げたのだから。音楽の逆輸入って言ってもいいんじゃないだろうか。で、その音楽を今度は日本人が聴いて懐かしさを感じる。「Loretta」はインターネットという文化の往復運動を成り立たせる環境から生まれた曲ななのだろう。だから80年代の曲じゃなくて、80年代を材料にして作られた、きわめて2020年代的な音楽なんだと思う。






