ガラパゴスからの船出

時代の潮流から随分外れた島に浮かぶ音楽ブログです。お気に入りの曲(2000年代後半が多め)の感想や好きな部分をひたすら垂れ流します。

eastern youth/夏の日の午後

eastern youthのことを知ったのはいつだったろうか。気が付いたらアルバムを持っていたバンドだったりする。初めて聴いたのがこの「夏の日の午後」だったことは覚えている。

このなんとも言えない日本感たるや。決して和風じゃないんですよね。昭和日本の夏なんですよ。MVの昭和の風景はもちろん加味されるんだけど、それ抜きにしてもすごい。

 

口笛とギターが小さく聴こえ、40秒ぐらいしてから始まるイントロ。ドンドンと叩かれる重厚なタムや、ギラつく日光を思わせるようなノイジーなギターが鳴る。もうここのパートだけで「夏の日の午後」が完成してしまっている。茹だるような暑さ、昇る陽炎、遠くから聴こえるセミの声、少し湿った匂い、全てが地面からニョキニョキと生えてくるようだ。

 

Aメロは二つぐらいしかコードを使っていないだろう。そしてメロディーはC#m7の音だけで構成されている。途中からブンブンと鳴るベースが入り、偶数拍を強調するギターのリズムがパンクに響く。歌詞はどこか罪というか後ろめたさを抱えた人が、背中に太陽を焼きつけながら、ただひたすらに歩いていく様子。

 

Aメロの最後で急に明るくBのコードが鳴り、サビでEに移る。シンプルだけどすごく綺麗。サビまでメロディーを取って気づいたんだけど、意図的なものかはわからないが、この曲はほとんど「民謡音階」で作られているんですよね。細かい説明は割愛するけれど、わらべ歌とかに使われている音階。だからこの曲は郷愁の念が沸き上がるような想いを抱かせてくれるのだろう。

 

そして歌詞では昼の暑さから俄雨や雷雨も降り、夕陽が沈み夜になっていく風景が描かれる。「振り返るな」という言葉は、最初の後ろめたさに対してだろうか。ただひたすらに前を見て歩いていかなければならない、そんな覚悟を感じる。だからなのか、私にはこの曲が"業の肯定"に聴こえる。罪を許しはしないけれど、それが人間だと肯定しているかのような。罪というと重く感じるが、たとえば子どもが虫を潰してしまったとか、軽いいたずらで誰かをケガさせてしまったとか、その程度のものかもしれない。自分だけがその罪を知っていて、後ろめたさを抱えてすごす夏の日の午後。そんな子ども時代の"業"だからこそ、郷愁の念を抱かせる民謡音階で仕上げたのだろうか。