ガラパゴスからの船出

時代の潮流から随分外れた島に浮かぶ音楽ブログです。お気に入りの曲(2000年代後半が多め)の感想や好きな部分をひたすら垂れ流します。

DragonForce/Heroes of Our Time

DragonForce(以下ドラフォ)の最高傑作であると私が考えているのが、この「Heroes of Our Time」だ。

腕を回してジャンプしたり、カオスパッドを操りまくったりと、Vadimがとにかく楽しそう

この曲はアルバム「Ultra Beatdown」のリード曲なんだけど、アルバム自体が非常に良くできていた。1stの「Valley of the Damned」から始まったドラフォの持つ叙情的なパワーメタルの世界観はこのアルバムで完成したし(次のアルバムから少し違う世界観に入った)、初期の頃は弱かったボーカルのZP Theartの声も磨かれて迫力が満ち満ちたりと、作品を待っていたファンの予想を上回るものに仕上がっていた。

 

開始8秒でトレモロアームの音が鳴ると、Aメロに入る。ここまでDmのコードで進んできたのに、急にBmに上がっていく。この展開の仕方は一つ前のアルバム「Inhuman Rampage」のリード曲である「Operation Ground and Pound」と同じであり、Sam Totmanらしい流れなのだが、ZPが伸び伸びと歌うところが大きく違う。またあちらの曲は割と東洋的な曲調なのだが、こちらはそうでもないという、今まであったようでなかったような不思議な感覚をここで覚える。

 

そしてBメロ。なんとボーカルとキーボード以外の音がピタっと止まり、コーラスを響かせる。これ今までのドラフォでは(確か)無かったことなんですよ。ドラフォと言ったら初めから終わりまで超高速でビートが鳴り続ける曲でアルバムが埋め尽くされているんですよね。それがここでブレイクダウンを入れてくるんだから、今までを知るファンからすれば驚いたのなんのって。もしかしてアルバムのタイトルはこういうことを指すのだろうか?などと思ったものです。でもちゃんとBメロ前半終わりからギターが頑張り、キックのツインペダルが忙しなく動き、徐々にスピードを戻していく。

 

そこから入るサビのカッコ良さたるや!急にメジャーコードだらけになるSamらしさ全開のサビだが、ここにも今までと違う所がある。Samが書いた曲なのに、Vadimのシンセの音が目立っているのだ。過去にもシンセの音が目立つ曲はあるのだが、それは大体Vadimが書いていたりするからで、Samの曲でここまでシンセ音が鳴るサビは初めてじゃないだろうか。でも、雲の上へ突き抜けていくようなSamの美しいメロディラインに、Vadimのキラキラしたシンセの音が丁度良い塩梅で合わさり、最高のサビに仕上がっている。そして「Rise above the universe tonight」の所で再びコーラスだけになり、タムがドン!と鳴って「Starchaser…」と締める、完璧な流れである。

 

2番も秀逸な出来であり、BメロがCメロのような別のメロになっていながら、サビへ徐々にヒートアップしていく展開など、1番を超えた構成に仕上がっている。「なんて名曲なんだろう…」とラスサビを聴いていたら、アウトロの部分で急にゆったりとコーラスを響かせてくるではないか…!先述のように、ドラフォは最後まで猛スピードで走り抜けていくバンドである。ところがこの曲は、走り終わった人をガシっと抱擁するような力強い展開で終幕を迎えるのだ。

 

ドラフォはこの後からボーカルを含めたメンバーや、アルバムの世界観がどんどん変わり、また別の世界を走り回っていくことになる。だからこそ、このアルバムのこの曲は、初期ドラフォが目指した山の頂なんじゃないかなあと私は思うのだ。