ガラパゴスからの船出

時代の潮流から随分外れた島に浮かぶ音楽ブログです。お気に入りの曲の感想や好きな部分をひたすら垂れ流します。

KIRIKO/セパレイトブルー

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15年ぐらい前だろうか、エロゲーに音楽を提供するKIRIKO/HIKO Soundというユニットがいた。コンポーザーのHIKO氏に、ボーカル・作詞・作曲を行うKIRIKO氏のコンビだ。有名どころだとSchool Daysにも曲を提供している。そんな実力派ユニットであるが、KIRIKO氏が他のクリエイターから曲の提供を受け、ソロで歌うこともあった。今回はそのうちの一曲である「セパレイトブルー」という曲について語ってみたいと思う。

この曲は同名のエロゲーの主題歌である。私はこのゲームをやったことはないので特に本編については語ることがないのだが、自転車部によるロードレースを舞台にした爽やか青春モノらしい。OPを見ればわかるが、時代を感じるタッチの絵である。

 

さて本題。作詞のMOKA氏は同作のプロデューサーを務めているので、歌詞は世界観をきっちりと反映させたものとなっている。作曲はElements Gardenのクリエイターである藤間仁氏であるが、当時はfeelに所属していたためか、まだエレガらしい曲調ではない。

 

まずイントロ。口笛のようなこの音はハンドフルートだろう。この楽器を使った曲をほとんど知らないのだが、爽やかな曲の始まりにはピッタリだ。ベースのスライドからイントロは急に開けたように明るくなる。リードギターは夏の晴天を思わせるハードな音作りをしており、スネアと同じタイミングで叩かれるタンバリンの音は、爽やかでポップなイメージを膨らませるアクセントになっている。「何かワクワクすることが始まるぞ!」という、青春ど真ん中の物語を予感させるイントロだといえるだろう。

 

Aメロ。リズム隊とアコギ、ピアノという穏やかな編成だ。ベースがほぼずっとルートを8ビートで弾いているのだが、それがまるでぐんぐんと進んでいく自転車を表しているようだ。自分も打ち込みをして気づいたのだが、速度を維持したまま走っている何か(バイクとか車とか)を表現したい時、このテクニックは有効なのである。

 

Bメロは少し賑やかになる。ベースもAメロより動きが見られ、オルガンとほんの少しのエレキギターが入ってきたことで曲調がロックに近づき、音に厚みが生まれる。それでも世界観が破綻せずAメロの爽やかな雰囲気が継続しているのは、ドラムのパターンがほとんど変わらないことと、メロディーの優しさ、そしてKIRIKO氏の柔らかいボーカルがあるためだろうか。

 

さてサビ。Bメロで編成としてはほとんど完成していたのだが、やはり欠かせないのがタンバリン。この音が一つ入るだけでポップで爽快感の突き抜けた曲になる、パズルでいうところの最後のピースのような立ち位置である。またKIRIKO氏のコーラスも美しく、曲に煌めきを与える良いアクセントになっている。しかしここまで色々な音が鳴っているのに、お互いに音を打ち消し合うこともなく、それぞれが上手く混じり合っているバランスがすごいと思う。これも曲を自分でミックスするから思うのだが、パン振りとかボリュームとかどうやっているんだろうと、以前から首を傾げている一曲なのである。

 

KIRIKO氏ソロ曲(別名義も含めて)の中で私はこの曲が最も好きであり、今も聴き続けている。それだけにKIRIKO氏としての活動が一切なくなってしまったのは寂しい。ブログもあんなに楽しそうに書いていたのになあ…。しかしあっちの名義のブログは全部消えてしまっているのに対し、こっちのブログは今も残っているので、たまに見返しては一抹の懐かしさを覚えたり。