ガラパゴスからの船出

時代の潮流から随分外れた島に浮かぶ音楽ブログです。お気に入りの曲(2000年代後半が多め)の感想や好きな部分をひたすら垂れ流します。

Tommy february⁶/MaGic in youR Eyes

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奥さまは魔女という有名な海外ドラマがある。このドラマの日本版が2004年に放映されていたのだが、その主題歌がTommy february⁶の「MaGic in youR Eyes」である。このドラマもアットホームで好きだったのだが、何より主題歌に私はヤラれた。なんて可愛くてポップな曲なんだろうと。それからというものの、「好きなジャンルは?」と聞かれたら「80年代ユーロビート」と答えるようになってしまった。

 

Tommy february⁶はthe brilliant green(通称ブリグリ)の覆面ユニットとしてデビューした。ブリグリについてはまた別の機会に書くつもりだが、イギリスのロックを日本でもヒットするよう、ポップにアレンジした絶妙な曲調に、ボーカル川瀬の気だるげな声とキャラクターをマッチさせたバンドだ。ただ私は当時のブリグリをそこまで覚えておらず、むしろTommy february⁶から逆流して知ったのであった。

 

Tommy february⁶は川瀬の持つガーリッシュな世界観を強めたソロプロジェクトで、曲調がモロにStock Aitken Watermanである。それだけだったらただの二番煎じなのだが、このグループの凄いところは、日本らしいパステルな可愛さの要素とマッチさせ、なおかつその相性の良さを知らしめた部分だと思う。このプロジェクトのPVでも彼女は相変わらず気だるげなのだが、なぜかノリノリという、文章だけで見ると矛盾だらけなパフォーマンスもきっちりとこなしている。しかもそれが女子ウケする可愛さなのだ。

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やる気がないのにノリノリ。可愛い

 

こういった独自の世界観を確立したミュージシャンとして、私はふときゃりーぱみゅぱみゅを思い出したのだが、Tommy february⁶の凄いところは、ブリグリで成功した時とは別のルートを歩いて「ほら、こういったゴールの仕方もあるでしょ?」と、外部のプロデューサーを連れてくるわけでもなく、自身の成功で体現するセルフプロデュースの力の強さである。その力は他の追随を許さず、似たミュージシャンを挙げろと言われても、曲調だけならまだしも、この世界観まで含めるとまず例が挙がらない。

さてそんなTommy february⁶の「MaGic in youR Eyes」は、四つ打ちスネアのモータウンビートが心地よいミドルテンポのポップス。音の種類は少ないのだが、それぞれの音がきちんと自分の役割を果たしており、不思議と賑やかな雰囲気を作り出している。とにかく乙女チックな歌詞がキラキラとしたこの曲と抜群に合っており、一分の隙すら見せない。川瀬もそうなのだが、その要求にキッチリと応える奥田俊作の凄さが改めて窺える。この人のメロディーセンスには脱帽である。

 

そして本家PVより好きなのが、ドラマ「奥様は魔女」のOP映像。子どもが思い描くようなおもちゃの世界で米倉涼子原田泰造夫婦がデートを楽しむというもの。あまりにもロマンティックすぎて、涙が出てくるレベルである(思い出補正も多分にあるが)。

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とにかくこの曲が私に与えた影響は計り知れなく、自分で曲を作るようになってからも、この路線を求めるようになっていった。Tommy february⁶だけでなくブリグリ自体がほとんど活動していないので、「じゃあ自分で作ってやらあ!」という具合に、私は可愛くてロマンティックな世界観を今日も追い求めている。

 

ちなみに私は自分の結婚式の入場時、この曲を流したいという野望が昔からあるのだが、その夢はまだ叶っていない。可愛くてロマンティックな世界は、辿り着かないからこそ素敵なのだと、自分自身に魔法をかけて言い聞かせているのである。

SOUL'd OUT/Love, Peace & Soul

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「一番好きなミュージシャンは?」と聞かれたら、私はSOUL'd OUTを挙げる。

 

SOUL'd OUTは一応ヒップホップのグループとして括られるのだが、R&B、ソウル、ファンク、ハウス、ロックなどの要素をサザンや小室系のJ-POPに落とし込み、新たなジャンルとして確立させたアーティストである(コンテンポラリーR&Bというそうだ)。ここまで各ジャンルを見事に折衷し、曲として成立させたのは、SOUL'd OUTしかいないのではないかと私は思っている。当時ゴリゴリのヒップホップ勢から「ソウルがねえ」「キモイぜウェカピポポップスター」などとディスられたが、よく聴けばブラックミュージックを研究しまくっていることがわかり、同じことのできたラッパーが、当時どれだけいただろうかと思う(批判されたのは、意味のわからない歌詞の方かもしれないが)。それもディスってきたラッパーとは比べ物にならない屈指のフロウスキルで歌っていたのだ。

 

このグループを知ったのは「ライオン先生」というドラマだった。カツラであるのを隠して生活を送る熱血教師の話であり、当時ドラマを見ることにハマっていた私は、新番組チェックでチャンネルを合わせた。そこで流れてきたのがこの曲だ。

外国人ばかりなのに、なぜか拭えない日本感

当時あまりミュージシャンを知らなかった私が、この曲に引き付けられた。ヒップホップなのに曲の構成がポップで、きちんと盛り上がるところは盛り上がる。何よりとてつもなくカッコよく、今まで聴いたことのない曲調だった。

 

しかし当時の私はまだ「CDを買ってこよう」と考えるほど歳を取っておらず、そのブームは3カ月で去った。私が彼らのCDを手にするのは、そこから3年後のこととなる。

 

今思うとこの「Love, Peace & Soul」は、他の曲に比べるとシンセの音が比較的少なく、ゆったりとしたビートが前に出た、彼らのシングル曲の中ではヒップホップ寄りの曲であった。歌詞の意味もわかりやすく、メッセージ性が強く歌いやすい。ドラマのタイアップにしては、世界観からズレているわけでもない。

 

そんなわけでこのブログでは、SOUL'd OUTが多い頻度で登場すると思う。それぐらいお気に入りのグループなのである。解散した今はそれぞれソロでやっているようだが、彼らの個性が上手いこと合わさった当時の曲の方が私は好きなんだよなあ。

F-ZERO GX/AX オリジナルサウンドトラックス

今回はアルバムのレビュー。

F-ZERO GX/AXのサントラである。何を隠そう私が初めて自分の小遣いで買ったCDなのだ。

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スマブラでお馴染み、キャプテン・ファルコンのレーシングゲームだ。

いや、ファルコンはそもそもレーシングゲームのキャラなのだが、続編が17年ほど出ていないので、もうスマブラのキャラ化している。しかしこのシリーズをプレイした人は皆、今もまだ続編を待っているはずだ(多分)。

 

そしてこの作品、BGMに力が入りすぎている。たとえばキャプテン・ファルコンの曲。

 

この曲はオープニングでもなく、レース中に流れるBGMでもなく、ゲーム内でキャラクターのプロフィールを眺める時専用のものである(マスタークラス優勝時のムービーでも挿入されるが)。しかも登場キャラ41人分の専用BGMが存在する。そしてあまりにも限定的な使いどころのくせに、クオリティがいちいち高い。作曲者が曲の依頼を受けた時に「え、レースのBGMじゃないの!?」と驚いたらしい。それから毎日キャラ一覧の絵を見ては、「今日は誰の曲にしようかな」と作業を続けていたとか。

 

個人的に好きな曲を挙げると、まずドクター・スチュワートのテーマ。

レーサーでありながら医者でもある彼のテーマは、なぜかハウスの流れをたっぷりと受けたトランスだったりする。

 

またデジボーイのテーマも一時期狂ったように聴いていた。

デジボーイは8歳の子どもながらにして地球上で一番頭の良い人間らしい。ディストーションギターが重厚になるロックなのに、四つ打ちのドラムマシンとピコピコと響くシンセの音が絶妙にマッチした中毒性のある曲だ。

 

プリンシア・ラモードも幻想的で良い。

プリンシア・ラモードはマジカール星デザート王国の王女らしいが、お転婆F-ZEROグランプリにお出てしまう。アラビア風の楽器・曲調がどこか高貴な雰囲気を、そしてハードロックなギターがお転婆さを演出するなど、非常にキャラに合ったBGMである(プリン→デザート→砂漠というシャレからこうなったのだろう)。

 

ゲーム本編で流れるBGMも素晴らしい。人気のある曲はスマブラに輸出されているので今回は取り上げず、あまり知られていないものの中から一つ私の好きな曲を挙げようと思う。

それがこのビッグブルーのリミックスである。トランス調にアレンジされると、リッジレーサーのようで実にレーシングゲームらしい。

 

このゲームは2003年に発売されたのだが、同時期のレーシングゲームとしては、「カービィのエアライド」があった。私はどっちを買おうか迷ったが、F-ZEROのほうが二週間ぐらい発売が遅く、「後発のほうが面白かろう」と大して変わらぬ発売日を判断基準とし、このゲームに足を踏み入れてしまった。当時エアライドを買った人が圧倒的に大多数であり、F-ZERO GXを買った人間など同じ学年で私ぐらいだったらしく、割と遠くのクラスのヤツから「お前F-ZEROやってるんだって?」と言われるほど、稀有な人間として噂が伝わっていたようだ。カービィ好きな妹からは「なぜあの時エアライドを買わなかったのだ」と、今でも言われる始末である。

しかし私は後悔などしていない。それどころかこんな良質なBGMと知り合えたのだから、F-ZEROを選んでよかったと思っている。本作のセーブデータが入ったメモリーカードを持って、今は亡きゲーセンBGBに置いてあったF-ZERO AXからマシンデータをゲットしたのも良い思い出である。 

 

そんなわけで続編は出ないのだろうか。もっとも今の私の動体視力は、もはや高速のレーシングに耐えられるかわからないのだが。

Shakin' Stevens/Love Attack

なかなかの偶然が私の音楽観の根っこを作った。

私が生まれて初めてハマったのはTHE TIMERSだったのだが、初めてハマった洋楽ミュージシャンはShakin' Stevensというイギリスの人物である。

 

日本では知名度があまりないミュージシャンだ。知っている人に出会ったことがない。だから何年か前にトヨタのCMで彼の別の曲が採用された時は驚いた。だがイギリスではヒットチャートに何度も名前を轟かせ、アルバムも10枚以上出している実力派である。

 

父方の叔父が結婚した時、イギリスに新婚旅行へ行った。音楽好きな私の父に対して、叔父はどういう基準かはわからないものの彼のアルバムを選んだ。日本では知名度のないそのCDは海を越えて父の下に届き、そこにいた私も聴いたというお決まりのパターンである。

 

曲としては昔ながらのロックンロールに、80年代ユーロビートっぽい四つ打ちのドラムが絡む、ご機嫌に踊れるロックである。私はこの曲も含めたこのアルバムにドハマりしてしまった。

 

後で知ったことだが、どうやらこのアルバム「There Are Two Kinds of Music... Rock 'n' Roll」は彼の作品の中でもかなり異色なもののようだ。元々彼はロカビリーやらブギ系のロックを主体とするミュージシャンだったのだが、17枚目のこのアルバムでStock Aitken WatermanのエンジニアであるPete Hammondがプロデュースに回った。急なユーロビート路線は、そのためである。つまり実験作だったというわけだ。そう考えると、このアルバム名も納得がいく。

 

 それまでの彼を知っていたファンはどう思ったのか知らないが、遠く離れた日本のチビっ子のハートは確実に射止めた「Love Attack」であった。歌詞を和訳するとかなり官能的なのだが、知ったことではない。

THE TIMERS/タイマーズのテーマ

 

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リバイバルというものが音楽には存在する。 

 

さて記念すべき一曲目のレビューを書こうと思い、真っ先に候補に挙がったのがTHE TIMERSの「タイマーズのテーマ」である。なぜなら私が覚えている限りで、最も古い音楽の記憶がこの曲だからである。私が3~4歳のその時、タイマーズは活動停止中にも拘らずである。

 

きっかけはよくある話で、私が幼い頃に父親がこのテープをよくかけていたこと。多分他にも聴いていたとは思うのだが、どうにも他の曲を覚えていない。つまり生まれて初めてハマったのが、タイマーズということになるのだ。

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 今でこそ、この曲の歌詞の意味がわかる。タイマーと大麻をかけているという、言葉遊びだ。なんていう英才教育をしてくれたものだ。しかし当時の私は幼すぎるあまり、大麻どころかタイマーの意味すらわかっていない。完全にノリだけでハマっていたのだろう。

 

年を重ねると共に、この曲の意味やルーツがわかるようになった。上記の言葉遊びだとか、モンキーズのテーマのカバー曲だとか、そもそも忌野清志郎の覆面バンドだとか。

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 いずれにせよ私は随分幼い時にハマった結果、7~8歳の頃にリバイバルマイブームが起こってしまった。「昔はこの曲聴いてたなあ」と、たかだか3~4年前のことを懐かしんでいたのだ。年齢を重ねた今の自分からすれば、3~4年というのは最近の話であるが、せいぜいタイマーの意味を知ったぐらいの年齢にとっての3~4年は生涯の半分なのだから、思い返すには充分な時間だった。

 

原点というものはやはり強い。歌詞に「いつでも君と笑っていたいな」とあるが、私は今もこの曲を聴きながら笑っている。思えば長い付き合いで、おそらくこの後も付き合い続けるのだろう。