ガラパゴスからの船出

時代の潮流から随分外れた島に浮かぶ音楽ブログです。お気に入りの曲(2000年代後半が多め)の感想や好きな部分をひたすら垂れ流します。

T.M.Revolution/BOARDING

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fripSideガルネクが好きな私は、その源流である浅倉大介氏の曲も当然ながら大好きだ。その浅倉氏の曲の中でお気に入りを一つ挙げるとしたら、T.M.RevolutionのBOARDINGだろう。

 

T.M.Revolutionといえば、西川貴教氏のソロプロジェクトかつセルフプロデュースであるが、それまでは浅倉氏のプロデュースであり、WHITE BREATHHOT LIMITなどの今も語られるヒット曲を連発してきた。その浅倉氏最後のプロデュース曲がこの曲である。ジャケットはなぜか金髪リーゼントで、すでに筋トレを始めてマッチョになっており、ピンクのスーツが似合わなくなっていたとか。

12.8万枚を売り上げた割にあまり語られることのない(少なくともファン以外では)曲だが、切なくもそれでいて元気づけられる名曲だと個人的に思っている。歌詞を見る限り「もう僕らは旅立てる」「そうここから旅立つんだ」というように、新しい一歩を踏み出していく姿が描かれており、この後セルフプロデュースになっていく西川氏の心情と重ね合わせているものなのかもしれない(PVから旅立ちの様子が全く感じられないが)。

 

90年代後半はイケイケの曲調が多かった中で、BOARDINGは異質だ。アコギやストリングスのフレーズが所々で印象的に鳴り響く。もちろんスネアの跳ね具合やベルの音色をしたシンセの入るタイミング、バリバリのディストーションギターは健在だ。なんというかまるで誰かが作ったバラードを浅倉流にアレンジしたような、落ち着いた一曲である。

 

ここから西川氏は一年後にシングルを一枚出した後、ガンダムなどのアニソンに接近していくことになる。アニメとT.M.Revolutionとの相性は抜群であり、今も活動を続けている。セルフプロデュースになってから迷いもあったのだろうが、これも巡り逢いだったのだろう。

9mm Parabellum Bullet/Living Dying Message

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歌謡ロックという言葉があるが、その言葉から真っ先に連想されるのが9mm Parabellum Bulletである。彼らの激しい音楽は、もはや歌謡ロックどころか歌謡パンクとか歌謡メタルな気もするが。

 

このバンドを知ったのもCSのPV集だった。多分2009年だったと思う。なんとなく見ていた時に映ったのがLiving Dying Messageだ。

曲自体は短いのだが、3分弱でこの濃密さである。「これぞ歌謡ロック!」と言わんばかりの哀愁に満ちたメロディながら、編成はバリバリのロック。PVを見ればわかるように、メンバーがとにかくよく動く(砂地で足場が悪いだろうに)。「ワーイワーイ」と聞こえるシャウトや、ドラムの上に乗るギターの滝氏、怒涛のツーバスなど、「なんだこのバンドは…?」と初見の私に思わせてくれるには充分なものだった。

 

その後、このPVがMTV VIDEO MUSIC AWARDS JAPAN2009の「ベストロックビデオ」にノミネートされてライブ出演を果たし、彼らはこの曲を演奏した(BS12で見たんだったかなあ…)。

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珍しくスーツで出演した9mm。最初こそボーカルの菅原氏もギターを持って出てきたのだが、歌に専念したかったのか途中でギターを外し始めた。脇からスタッフが出てきてそのギターを回収するという臨機応変さを見せ、更にライブだとPV以上に暴れるものだから、カッコよくて仕方がなかった。

 

何で見たかは忘れたが、9mmがインタビューを受けている番組があった。その時にボーカルの菅原氏が「俺の声は滝に似ている」と言っていたシーンをなぜかよく覚えている。「バンド内で似るって面白いなあ」と私は思ったのだが、今回の記事と特に関係はない。

TOMOVSKY/脳

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TOMOVSKYを知ったのは8年ほど前だっただろうか。2ちゃんねる(現5ちゃんねる)のVIP板にいた時に、オススメの音楽を紹介するスレみたいなものがあって、そこで誰かに教えてもらった覚えがある。そこから自分も、他の人に勧めるようになった。このTOMOVSKYというミュージシャンは、誰かに教えたくなる魅力があるのだろう。

 

その時教えてもらったのが、この「脳」という曲。

歌詞だけを見ると、なかなかネガティブだ。「気がめいってるとヤラレル それで落ち込んだらもっとヤラレル」「悲しみの分だけ強くなれるよ、なんて全部ウソだった、幻だった神はいなかった 」「ああ残酷だ不公平だ無慈悲だ」「内向的なキマジメはタメルだけタメテボロンボロン」と、一度は誰もが思ったことのあるような理不尽な人間の仕組みをこれでもかと垂れ流す。そして「やってらんない まあやるけどね」という部分が、胸にストンと落ちる。

 

しかしこの歌詞を乗せる曲は、非常に軽やかでポジティブ志向なのが面白い。ギターもドラムもベースも同じリズムに合わせており、ノリの良さを引き立てている。時折聴こえてくるトモフの掛け声や、ラグタイムで使われるようなピアノだかオルガンだかわからない鍵盤の調子っぱずれた音が心地良く、脳の仕組みに頭を抱えているというよりかは、その理不尽さに「あ~仕方ねえな」と自嘲するように聴こえる不思議さがある。

 

TOMOVSKYは「ネガチョフ&ポジコフ」というアルバムを出しているように、曲の中でネガティブとポジティブが同居するものが多い。底抜けに明るいわけでもなく、かといって悲壮感に項垂れるわけでもなく、人間の微妙なメンタルを上手いこと表現している。だからだろうか、ひどく疲れた時や嫌なことがあった時にTOMOVSKYの曲を聴くと、低いテンションのまま頑張る気になれるのだ。こういう気持ちにさせてくれるミュージシャンはなかなかいない。

 

なおこの曲を当時付き合っていた人に聴かせたところ「救いようのない気持ちの曲だね」的な言葉で評されたことをおぼえている。そんなことはない、なかなかに救われる曲だと気がついたのは、その人にフラレた直後だったりして。

ザ・クロマニヨンズ/タリホー

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私はTHE BLUE HEARTS↑THE HIGH-LOWS↓も詳しく知らない。父が好きではなかったのか、家で聴こえたこともない。自分でCDをいつか掘り下げるだろうと思って、それっきりだ。しかしクロマニヨンズは違う。自ら見つけてハマっていったバンドだ。

 

初めてこのバンドを知ったのは、スペースシャワーのCMだったような覚えがある。なんかのライブの出演者と宣材写真一覧が表示される中、なぜかサルだかゴリラだかわからないような絵とともに「ザ・クロマニヨンズ」とのみ書かれた彼らを見た。「BEAT CRUSADERSのような顔を隠して活動するバンドかな?」と思い、特に調べたりすることもせず、それっきりであった。しかし私の知らないところですでに彼らの正体は言及されていたようであり、それが甲本ヒロト氏と真島昌利氏の新バンド「ザ・クロマニヨンズ」だったのだ。

 

それから少ししてタリホーのPVを見た。

PVがなかったので、テレビでのライブ映像

極限までシンプルに削ぎ落としたロックンロール。コードも簡単なものしか使っていない。真島氏はろくにギターソロなど弾かず、ひたすらにコードをかき鳴らしている。彼らは当時40歳をすぎていながらも、この動きである。色々な武器を使ってきた結果、素手で戦い始めた武闘家のようでカッコいい。歌詞は抽象的とかいう範疇を越えて、もはや意味を勘ぐることもできないレベルだ。クロマニヨンズとしての一歩を踏み出す所信表明かな?と私は思っている。

 

クロマニヨンズはコードもシンプルで歌詞もわからなくて、なぜかモノラルで録音されているアルバムが多い。しかし新しい曲が発表される度「そのコード進行でこんなカッコいい曲ができるのか…」と溜息をつかされる。年齢を重ねても衰えが感じられず、いくつになっても「自分のままで」初期衝動を貫き通すロックンローラーの奏でる音だからこそ、これほどまでに人の心を動かすのだろう。

girl next door/Seeds of dream

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一体どれほどの人がgirl next doorを覚えているだろうか。エイベックスが社運をかけて送り出したグループで、90年代のデジタルJ-POPの勢いを再び取り戻そうと言わんばかりに猛プッシュされていた。デビューから3カ月で紅白出場、出す曲は大体タイアップ、あっさりとレコード大賞新人賞受賞という凄まじい待遇は、当時ネットで「ゴリ押し商法」などと揶揄されていた。実際身近にgirl next doorを好きな人など見当たらず、気が付けば5年ほどで解散してしまった。しかしそんな彼女たちにハマった人間がここにいる。私は今までも言及しているように、こういった類のデジタルミュージックが大好物なのだ。

 

私がこのグループを知ったのは、「偶然の確率」というデビュー曲である。「あらびき団」という当時私がハマりまくっていたお笑い番組で、一カ月ほどタイアップのEDとして使用されていた。しかしながらその時はそこまで印象に残っておらず、そこから一年ほどが経ってスカパーのPV集で出会ったのが「Seeds of dream」という曲である。

いやあ喰らったのなんのって。ベースが隠れるほど凄まじく強気なキックドラム。ダンスミュージックでよく聴こえるJD-800のようなピアノ、左右に散らばるシンセ音、しっかりとエイベックスの音楽を継承し、当時の最先端の音で仕上げたのだろう。それでいてイントロのシンセソロからは今までにない新しさを感じるし、ボーカルの千紗氏の溌溂とした笑顔やキレの良いダンス、応援ソングともいえるほどの前向きな歌詞など、ヒットに必要な要素としての不易と流行が詰め込まれている一曲だ。

 

学生時代の私は、忘年会で「一年の出来事」みたいなものを、フリップ芸で披露したりしていた。スケッチブック一冊分のネタをカラオケが一段落した時にやった後、そのノリでなぜかこの曲を歌った。「その流れからなんでスムーズにガルネクに入れるんだ」と友人にツッコまれたことを今でも覚えている。

毛皮のマリーズ/Mary Lou

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「天才ミュージシャン」というと、毛皮のマリーズドレスコーズでフロントマンを務めている志磨遼平氏の顔がまず頭に浮かぶ。往年の洋楽を再編成して現代に極上のポップスとして蘇らせる技術や、細くて中性的で抜群のロックンローラーな見た目、小さな子どもを優しく寝かしつけるようなものから鬱屈したエネルギーを吐き出すようなギャップのある歌詞、そして少し鼻にかかった独特かつクセになる声。これらの才能をアルバムや曲ごとに色々な表情として表現する、まさしくアーティストと呼ぶに相応しいミュージシャンである。私は特に毛皮のマリーズの時の、ロック版のサンプリングとでも言うようなクラシックな曲調が大好きだ。

 

私がマリーズを知ったのがこのMary Louという曲。

PVに出てくる長髪の男性が志磨氏なのだが、フルバージョンのPVだとモヒカンで化粧をしている志磨氏が先に出てくるため、最初はそちらが本来の姿だと思っていた。曲調も往年のフレンチポップスのようでありながら、George Harrisonの「What Is Life」を思わせるようなゆったりとしたモータウンビートがほとんど一貫して流れ、「この時代にこんなことやるバンドいるのか…」とビックリしたことを覚えている。そして私はその異様な魅力を纏った謎のバンドに惹かれていったのである。

志磨氏のリスペクトが伝わる元ネタ(かどうかは知らないが)

この曲の良さにかなり甘めの歌詞がある。まるで隣に寝ている人がいて、その人に語りかけるような歌詞を志磨氏はたまに書くのだが、その中でもなかなかの甘さである。映画「小さな恋のメロディ」を思い出すような、少年少女の甘酸っぱい恋がこれでもかと描かれている。ではこの「Mary Lou」とは誰なのか。確信めいたものはないのだが、Ricky Nelsonというアメリカのミュージシャンの「Hello Mary Lou」という曲の歌詞にインスパイアされたのではないだろうか。

曲調は異なるが、世界観が近い

こういうチョイスをするところに志磨氏の類まれなるセンスを感じずにはいられない。

TWO-MIX/JUST COMMUNICATION

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突然だが、私はガンダムをほとんど見たことがない。そんな私が唯一見ていたのが(ガンダムを知ったきっかけも)Gガンダムである。熱い展開、魅力あふれるキャラクター達、幼少の自分にもわかりやすいストーリー。毎週楽しみに見ていたものだ。

 

Gガンが終わり、始まったガンダムWは私の期待を大きく裏切ってくれた。「え、ガンダムなのに拳で戦わないの?」「なんで主人公あまり叫んだりしないの?」幼い私にはとてもヒイロが主人公だとは思えなかった。というかヒイロが名前だとわからず、「なんでこの主人公、ヒーローって呼ばれているんだろう。すごい冷めているのにヒーローって…」などと思っていた。きっと全てGガンのせいである。

 

そんなこともあり、いつの間にか私はガンダムWを見なくなっていった。そしてガンダムから随分早く足を洗ったのである。しかしよく覚えていたのが、OPの「JUST COMMUNICATION」。曲を担当するのはTWO-MIXという今や大御所ユニットだ。


このユニットが独特なのは、まず作詞と編曲者が永野椎菜氏で、作曲者が声優の高山みなみ氏というところ。大体こういうボーカル&キーボードのグループは、作詞がボーカルで作曲・編曲がキーボードというのがお決まりだ。しかし高山氏が曲を作れるためか、このクレジットで曲を出すことが多くなっている。こういう並びのユニットを私は他に知らない。

 

もっともこの「JUST COMMUNICATION」に関しては、作曲は馬飼野康二氏なので高山氏はボーカルに徹している。そしてTWO-MIXといえばオケヒの雨あられなのだが、まだこの曲ではそれが見られない。その代わり小室哲哉氏の影響が大きく、そこいらじゅうでKORG M1のピアノサウンドが鳴っている。前身のES CONNEXIONから始めて、まだまだ手探りで自分たちのスタイルを確立しようとしている時期だったのだろう。

 

この曲を聴いてから何年が経っただろうか。ふとTWO-MIXのことを思い出し、音源を集めるようになった。今年ベスト盤が発売されて高い売り上げを叩き出すなど、今でも愛されているユニットである。そして私もまた、彼らの復活を期待している一人なのである。