ガラパゴスからの船出

時代の潮流から随分外れた島に浮かぶ音楽ブログです。お気に入りの曲(2000年代後半が多め)の感想や好きな部分をひたすら垂れ流します。

TOMOVSKY/脳

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TOMOVSKYを知ったのは8年ほど前だっただろうか。2ちゃんねる(現5ちゃんねる)のVIP板にいた時に、オススメの音楽を紹介するスレみたいなものがあって、そこで誰かに教えてもらった覚えがある。そこから自分も、他の人に勧めるようになった。このTOMOVSKYというミュージシャンは、誰かに教えたくなる魅力があるのだろう。

 

その時教えてもらったのが、この「脳」という曲。

歌詞だけを見ると、なかなかネガティブだ。「気がめいってるとヤラレル それで落ち込んだらもっとヤラレル」「悲しみの分だけ強くなれるよ、なんて全部ウソだった、幻だった神はいなかった 」「ああ残酷だ不公平だ無慈悲だ」「内向的なキマジメはタメルだけタメテボロンボロン」と、一度は誰もが思ったことのあるような理不尽な人間の仕組みをこれでもかと垂れ流す。そして「やってらんない まあやるけどね」という部分が、胸にストンと落ちる。

 

しかしこの歌詞を乗せる曲は、非常に軽やかでポジティブ志向なのが面白い。ギターもドラムもベースも同じリズムに合わせており、ノリの良さを引き立てている。時折聴こえてくるトモフの掛け声や、ラグタイムで使われるようなピアノだかオルガンだかわからない鍵盤の調子っぱずれた音が心地良く、脳の仕組みに頭を抱えているというよりかは、その理不尽さに「あ~仕方ねえな」と自嘲するように聴こえる不思議さがある。

 

TOMOVSKYは「ネガチョフ&ポジコフ」というアルバムを出しているように、曲の中でネガティブとポジティブが同居するものが多い。底抜けに明るいわけでもなく、かといって悲壮感に項垂れるわけでもなく、人間の微妙なメンタルを上手いこと表現している。だからだろうか、ひどく疲れた時や嫌なことがあった時にTOMOVSKYの曲を聴くと、低いテンションのまま頑張る気になれるのだ。こういう気持ちにさせてくれるミュージシャンはなかなかいない。

 

なおこの曲を当時付き合っていた人に聴かせたところ「救いようのない気持ちの曲だね」的な言葉で評されたことをおぼえている。そんなことはない、なかなかに救われる曲だと気がついたのは、その人にフラレた直後だったりして。