ガラパゴスからの船出

時代の潮流から随分外れた島に浮かぶ音楽ブログです。お気に入りの曲(2000年代後半が多め)の感想や好きな部分をひたすら垂れ流します。

毛皮のマリーズ/Mary Lou

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「天才ミュージシャン」というと、毛皮のマリーズドレスコーズでフロントマンを務めている志磨遼平氏の顔がまず頭に浮かぶ。往年の洋楽を再編成して現代に極上のポップスとして蘇らせる技術や、細くて中性的で抜群のロックンローラーな見た目、小さな子どもを優しく寝かしつけるようなものから鬱屈したエネルギーを吐き出すようなギャップのある歌詞、そして少し鼻にかかった独特かつクセになる声。これらの才能をアルバムや曲ごとに色々な表情として表現する、まさしくアーティストと呼ぶに相応しいミュージシャンである。私は特に毛皮のマリーズの時の、ロック版のサンプリングとでも言うようなクラシックな曲調が大好きだ。

 

私がマリーズを知ったのがこのMary Louという曲。

PVに出てくる長髪の男性が志磨氏なのだが、フルバージョンのPVだとモヒカンで化粧をしている志磨氏が先に出てくるため、最初はそちらが本来の姿だと思っていた。曲調も往年のフレンチポップスのようでありながら、George Harrisonの「What Is Life」を思わせるようなゆったりとしたモータウンビートがほとんど一貫して流れ、「この時代にこんなことやるバンドいるのか…」とビックリしたことを覚えている。そして私はその異様な魅力を纏った謎のバンドに惹かれていったのである。

志磨氏のリスペクトが伝わる元ネタ(かどうかは知らないが)

この曲の良さにかなり甘めの歌詞がある。まるで隣に寝ている人がいて、その人に語りかけるような歌詞を志磨氏はたまに書くのだが、その中でもなかなかの甘さである。映画「小さな恋のメロディ」を思い出すような、少年少女の甘酸っぱい恋がこれでもかと描かれている。ではこの「Mary Lou」とは誰なのか。確信めいたものはないのだが、Ricky Nelsonというアメリカのミュージシャンの「Hello Mary Lou」という曲の歌詞にインスパイアされたのではないだろうか。

曲調は異なるが、世界観が近い

こういうチョイスをするところに志磨氏の類まれなるセンスを感じずにはいられない。