ガラパゴスからの船出

時代の潮流から随分外れた島に浮かぶ音楽ブログです。お気に入りの曲(2000年代後半が多め)の感想や好きな部分をひたすら垂れ流します。

TM NETWORK/金曜日のライオン (Take it to the Lucky)

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Get WildBe TogetherにBeyond The Time。TM NETWORKを象徴し、今も語られる曲は枚挙に暇がない。私が初めて出会った彼らの曲は覚えていないのだが、本格的に聴いてみようと思いたったきっかけは、TM NETWORKデビュー曲「金曜日のライオン」なのである。

「有名なグループなのだから、最初のシングルから聴くのが当然だ」などと律儀なことを思ったわけではない。適当に調べたらYoutubeで出てきたのか、あるいは誰かがネットで勧めてくれたのか、定かでもない。いずれにせよ一時的に脳内ループするほどに、この曲は私を虜にした。

 

何で聞いたかは忘れたが、小室氏が作った曲に詞をつけてもらおうとしたところ、「この曲はもう曲として完成している」と作詞家が匙を投げ、仕方なく小室氏が辞書をひきつつ歌詞をつけたそうだ。「Jeria」というアフリカの女性と出会った男性の悲しい愛の曲のようである。用いているワードもアフリカらしさ満点なのだが、なぜか私はこの曲を聴くと都会をイメージしてしまう。当時にしては珍しい打ち込み100%の曲だからなのか、あるいは80年代に大都市として成熟期を迎えていた東京で生み出された曲だからなのか、どうにもトレンディな世界観の歌詞だからなのか。自分でもわからないのだが、大自然だとかワイルドさだとかはイメージができないのである。

 

もっともイントロはアフリカンだ。いきなりハイテンションなボンゴが鳴り響き、シンセで作った象の鳴き声が轟き、オルガンのようなシンセの音は遠い大地の先から登ってくる朝日と草の匂いを思わせる。パーカッションが次第に増えていき、ここまでは確かにアフリカだった。しかし0:34のあたりのコーラスや「ハッ!ウッ!」で、アフリカの大地がまるで夢であったかのように、現実に引き戻されてしまうのが面白い(そんな意図はないだろうが)。

 

そこからマイナーコードでソリッドな曲調が続くが、やはりこの曲の最大のポイントは「Together Together 林駆けめぐる…」の部分だろう。突然ゴキゲンなメジャーコードに移り、 この頃多用していたコーラスの美しさが存分に光る。数年後に発表される、さらに洗練された曲調で構成されたアルバム「humansystem」の雰囲気が、すでに感じられる。

 

この曲はシングルとアルバムで長さが随分違う。シングルだとイントロの重厚なアフリカの空気がカットされており、始まってすぐに「ハッ!ウッ!」と対面する。なので私はアルバム版のほうが好きなのだ。