ガラパゴスからの船出

時代の潮流から随分外れた島に浮かぶ音楽ブログです。お気に入りの曲(2000年代後半が多め)の感想や好きな部分をひたすら垂れ流します。

茅原実里/Paradise Lost

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特にファンというわけでもないのだが、“茅原氏”と毎回打つのも味気ないので、愛称の“みのりん”を使わせてもらおう。私がみのりんの歌を知った曲、「Paradise Lost」である。

喰霊-零-」というアニメの主題歌だったか。このアニメはすぐに見なくなったのだが相当な食わせ物だった。特殊部隊で戦う主人公チームの物語で一話が進んでいったが、そのメンバーが一話ラストで全員殺されるという、DTBも真っ青な凄惨な展開を見せた。で、本当の主役達の物語が始まるというわけだ。

 

まあサプライズ要素ということなのだが、何がすごいって公式サイトも特殊部隊が活躍するかのようにデザインされていたし、果ては近所のTSUTAYAに売っていた原作マンガのポップすら特殊部隊を貼っていたのである。ここまでするか。少しして同じTSUTAYAに行った時にまだそのポップが貼ってあったので、心の中で「おのれTSUTAYAめ」と罵ったことを覚えている。いやTSUTAYAは悪くないんだが。

 

本題に入ろう。そのアニメが少ししてから流れてきたのがエレガっぽさ全開のOP。イントロからバリバリのデジタルロックなのだが、そこに響くのが、この曲の主役ともいえるストリングスである。早いテンポでの16分音符のフレーズもなんのその、エッジの効いたその音色はもはやシンセで作ったストリングスのようであり、私もそう思っていたのだが、調べてみたら実際に弾いているのだとか…。

 

Aメロ16小節は最後の一小節を除いてキックドラムを一切鳴らさない。二番のAメロでは変則的ではあるがキックを鳴らしているので、Aメロとしての盛り上がりを控えめにして、最高到達点である一番のサビに向けての準備を始めているのだ。

 

Bメロから段々と各楽器が揃い始めるが、ここも盛り上がりを抑えた進行になっている。7小節目に一つマイナーコードを挟んで、まるで踏み切り板を用意したかのように8小節目にドミナントコードが置かれてある。

 

ここまでの24小説を経て、溜めに溜めたサビがとうとうやってくる。勿体つけたかのようでハードルは上がりきっているものの、その高さを易々と超えてくるのがこの曲のサビである。みのりんの曲はストリングスを多用するものが散見されるが、この曲はまさにストリングスのためにあるような曲であり、サビでは荒れ狂う暴風を引き連れてきたかの如く、その真価を発揮する。そしてコーラスも含めて、それに負けないみのりんの声が凄まじい。ストリングスが連れてきた暴風は、みのりんの声を押し上げるためのエネルギーだったということがここでわかるのだ。

 

この16小節だけで充分サビとしては成立しているのだが、さらにここから8小節サビが続く。音は一度大人しくなるものの、最後には音色が勢ぞろいしてきっちりとサビを締める。

 

angelaの「Beautiful fighter」なんかもそうなのだが、ストリングスを多用した風速の強い曲が私は大好きであるので、当然みのりんの曲は好みのものが多かったりする。それだけに今年で歌手活動を引退してしまうのは、やはり悔やまれるのである…。