ガラパゴスからの船出

時代の潮流から随分外れた島に浮かぶ音楽ブログです。お気に入りの曲(2000年代後半が多め)の感想や好きな部分をひたすら垂れ流します。

JUDY AND MARY/LOLLIPOP

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私がJUDY AND MARY(以下JAM)を知ったのは確か「Over Drive」あたりで、一番聴いていたのが「そばかす」で、昔付き合っていた人に勧められたのが「KYOTO」だった。他にも多くの名曲が存在するが、ひっそりと気に入っている曲はこの「LOLLIPOP」だったりする。

解散発表後にリリースしたラストアルバム「WARP」。「Brand New Wave Upper Ground」や「ラッキープール」というモンスター級の曲が揃っている中、ポツンと佇んでいるのがこの曲。コードは非常にシンプルで、JAMらしいポップでバンクな曲調なのだが、技巧を凝らしているわけでもなく、他の曲に比べればどうにも地味である。曲のクオリティが低いということではないが、わざわざラストアルバムに入れるか?って感じ。

 

しかし歌詞を聴けば、ラストアルバムに相応しい曲であることがわかる。もう相手に恋慕的な感情はなくなった主人公の「お別れよ好きだった人 元気でね」というフレーズから始まるこの歌は、主人公が今までの思い出を振り返って歌う曲だ。「きっと忘れてやらない」とか「ぎゅっと胸しめつけるけど」とか、未練があるような言葉は見られるのだが、「きっと一度きりの運命」「いたずらに未来を変えてしまう」とあるように、決して縒りを戻そうとしない固い決心が窺える。「2度と治らない風邪」を引いた主人公は、かつてあれだけ愛したイチゴの味もわからなくなり、「そんなこともあったけどね」とでも言いたげに振り返るである。

 

ここまで見ればわかるかと思うが、この曲はYUKIによるJAMへの想いそのものなのだろう。YUKIにとってJAMは自分をスターに押し上げた唯一無二のバンドだった。詳細は色々考察され尽くしているので先行研究に譲るが、バンドを終わらせることになった時、その軌跡を振り返って書いた曲なのだろうと思わずにはいられない。それだからか、余計なものを省いたスッピンのような曲に仕上げたのではないだろうか。この曲はこれでいいのだと。

 

なんという切ない曲なのだろう。去り際にこんな曲を置いていくJAMはズルイったらない。この曲を聴く度に、昔付き合った人だったり、深夜まで話し合ったりしたバイト先の仲間だったり、色々と可愛がってくれた大学の先輩だったり、同じ業界への就職を目指していた他大学の同志だったりと、もう二度と会わないであろう人たちのことを思い出してしまう。この曲と違ってそのほとんどは特に切ない別れ方をしたわけではないのだが、戻れない人間関係や時間という心のノスタルジックな部分を締め付けるには充分な曲である。

 

さてJAMの話に戻る。バンドの他メンバーはイベントでセッションをしている様子が見られるが、YUKIのみメンバーとの絡みが一切ない。彼女の中で「LOLLIPOP」の精神は今もまだ続いているのかと思ったが、おそらく「LOLLIPOP」がYUKI自身のアーティストとしてのスタンスを表したものなのだろう。だからYUKIYUKIでいる限り、JAMの再結成はないのだと思ってしまう。その時ふと気づく。「本当はもう会えない事を知って」しまった私もまた「LOLLIPOP」のスタンスになっているのだ。なあんてね。