ガラパゴスからの船出

時代の潮流から随分外れた島に浮かぶ音楽ブログです。お気に入りの曲(2000年代後半が多め)の感想や好きな部分をひたすら垂れ流します。

D.O/WE ARE 練MUR feat.JASHWON,PIT GOb

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10年以上前に放送されていた、TBSのバラエティ番組「リンカーン」でD.Oを知った人は、そこそこ多いのではないだろうか。私もその一人だったりする。

 

リンカーンの企画に「ウルリン滞在記」という、芸人が全く縁のない世界で一週間生活するという「世界ウルルン滞在記」のパロディがあった。ギャルサーやらオタク業界やらゲイのマーチングバンドやら、知ってはいるもののどういう世界かわからないようなディープな業界に、芸人がツッコミを入れつつ笑いを誘うものの、感動のラストを迎えるという流れだ。

 

そのうちの一回として、中川家の剛が練馬のラップクルー「練マザファッカー」に入り、ヒップホップを体験するという回があったのだ。番組では語られていなかったが、この練マザファッカーは元からあったグループというよりかは、地元の緩い繋がりを元にして、この番組の企画のために結成されたもののようだ。しかしそんなことを感じさせないほど、ナチュラルなクルー感が出ており、なおかつそこに中川家 剛が行くというアンバランスさが抜群のインパクトを生み出した。

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その企画の中で、剛がラップの練習に使っていたのが、D.Oの「WE ARE 練MUR feat.JASHWON,PIT GOb」である。

原曲からピッチを三つ下げてサンプリングしているのがわかる

アップされている動画で言及されている通り、THE 9TH CREATION という70年代に結成された(日本では)マイナーなグループの曲のイントロをサンプリングしている。トラックメイカーも務めるJASHWONは、アメリカのファンクやソウルミュージックのサンプリングセンスが素晴らしく、そこにブッといドラムを打ち込んでヒップホップにしてしまう巧みさがある。意図的なものかはわからないが、ニロ抜き短音階で弾ける音になっているため、なんとなく和風テイストに聴こえる。ドラムのタムの部分だけヒューマンビートボックスで録ったものを、ピッチ上げ下げして使ってるっぼい所も面白い。

 

ラップの部分は三人でのマイクリレーものである。D.Oは韻にこだわらないラップをするのだが、高めの声質でまくしたてる、言葉と言葉の繋がりが途切れない(音の空白が少ない)唯一無二のフロウが魅力だ。練馬だけでなく日本をレペゼンするようなリリックも特徴的で、和風のトラックとの相性も良い。

 

JASHWONのラップはトラックメイカーらしく(?)、音に対してタイトに乗せている感じがある。なぜかフェイザーっぽいエフェクターを使っている部分があるのも、やはりトラックメイカーならではだろうか。

 

PIT-GObのフロウも、一耳聴けば彼だとわかるぐらいかなり独特だ。言葉の持つキーを一度解体して、それを彼なりに再構築したと言えばいいのだろうか。三人の中で最も音の高低差があり、普通にラップしてもそうはならんだろというぐらい、アイデンティティを感じる。

 

そしてこの曲の見せ所は、やはりhookの部分だろう。音の数が少なく長い音が多いこともあり、音に合わせて全員が声を揃える様子は、まるで不良が歌う校歌のようだ。曲名が「WE ARE 練MUR」なのだから、校歌ではないものの、彼らの名刺代わりというか、アンセムになる曲として作られたのだろう。