もう30年前ぐらいの話になるんだけれど、「金子信雄の楽しい夕食」という料理番組が平日のお昼間に放送されていた。当時幼稚園児だった私がこの番組を見ることができたのは、たぶん水曜は午前中帰りとか何かで、その日だけ見れていたのだろう。幼少の頃故にあまり記憶にないのだが、なぜか強く脳裏に焼き付いているのが、司会の金子氏が毎回収録中に酒を飲んでいるということだった。
回によってビールや日本酒やワインを楽しむのだが、作っている時に飲み、出来上がった料理を食べる時に飲み、挙句の果てに作った料理を食べずに酒だけ飲んでいるという体たらく。何が恐ろしいかって毎日収録しているのではなく、1日に1～2週間分を録り貯めしていたらしく、最後のほうになると金子氏がベロベロに泥酔しており、呂律が回らずにフラフラしながら料理を作っていた。アシスタントの女性に対してのセクハラも日常茶飯事で、今考えると時代を感じさせるアナーキーな料理番組であった。
そんな同番組の主題歌が、エッチャン&ジュンちゃん名義でチェリッシュが歌う「COOK・クッキング」である。
料理番組の主題歌らしく、イントロからレンジの音が入ったり、まな板を叩くようなパーカッションの音が聴こえたりする。このパーカッションの使い方が賑やかなのが特徴的で、ホーンセクションも華やかであり、総じてサンバを思わせるような明るさがある。
歌詞としては仕事から帰ってくる夫を労うため、料理のメニューを一生懸命考える主婦の歌だ。今でこそ料理のレシピなんてネットに転がっていて、それでも今日の献立に頭を悩ませるのだが、ネットすら存在しない時代なのだから、その苦労たるや今とは比べ物にならないだろう。しかしそれすらも夫への愛として楽しく歌っている、パワフルな曲なのだ。
