ガラパゴスからの船出

時代の潮流から随分外れた島に浮かぶ音楽ブログです。お気に入りの曲(2000年代後半が多め)の感想や好きな部分をひたすら垂れ流します。

Neko Jump/Poo

タイにNeko Jumpという双子の姉妹アイドルがいた。2006年にアルバム「Neko Jump」でデビューしたのだが、そのアルバムの楽曲がなぜか「あにゃまる探偵 キルミンずぅ」という日本のアニメの主題歌に採用されたのだった。

 

私はこのアニメを見ていなかったが、主題歌の「Poo」という曲にはハートを撃ち抜かれてしまった。

ダンスも含め、彼女達の可愛さが存分に発揮された作品に仕上がっているのだが、この歌詞とPVの意味不明さときたらどうだろう。曲名の「Poo」というのはタイ語で「蟹」を意味するらしい。タイでは蛇が神とされるぐらい縁起が良く、蛇の夢を見ると運命の人と出会えるらしい。ところが「大きな蟹が出てきて自分たちを追いかけてくる悪夢ばかり見てしまい、とても怖い!」という歌なのだそうだ。これは蟹に追いかけられる怖さもあるのだが、運命の人に会えない怖さもあるのだとか。PVではなぜか蟹というよりマッチョ達に追いかけられているのだが。

 

城が出てきたりカタカナや漢字を使ったり日本のラジオがサンプリングされていたりと、日本を意識した作りのPVになっているのが面白い。そもそもユニット名に「Neko」が入っているあたり、当初から日本進出を考えていたのかもしれない。

 

愉快な世界観の「Poo」だが、最大の魅力は楽曲のクオリティの高さにあると思う。AメロからBメロ前半まではE♭マイナーで進む短調なのだが、全く暗さを感じないほど曲の可愛さが光る。特にBメロから入るスネアは小気味よく、手拍子を叩きたくなるぐらいだ。

 

Bメロ後半から急にメジャーコードが多くなり、サビへ向かう。この「Oh no no no」の可愛さときたら、もうたまったものじゃない。何が面白いってこの曲は♭六つの変ホ短調で始まってるのに、同じく♭六つの変ト長調平行調転調するところですよね。サビ8小節目のB♭mからB♭へちょっとだけ上がるところや、最後に入る笑い声、二番終わってサビを繰り返す時にボーカルとドラムだけになる所が個人的に好き。

 

打ち込み系の曲であるが、ギターやエレピが使われており、リズムはなぜかボサノヴァを思わせる。そこに日本を意識したアイドル歌謡要素が入ってくる。もはやこの曲はインターナショナルミクスチャーポップスとでも呼べるのではないだろうか。

 

さてそんな「Poo」だが、日本でも発売されることになったため、日本版のPVが作られている。

元々のPVが若干セクシーであり、夕方の子ども向けアニメのPVとしてはいかがなものか、という部分もあったのだろう。若干日本のアイドルチックな萌え寄りにローカライズされているが、これはこれで可愛い。

 

そしてアニメのOPがこっち。

子どもがテレビの前で真似したくなる振り付けである。

 

Neko Jumpであるが、数年後には大人の色気漂うEDMの楽曲を発表したりと、段々と路線変更をしていった。日本には何度も来て活動をし続けていたものの、2016年に事務所との契約が終了したことでNeko Jump名義を使えなくなってしまった。今はYouTuberをやっているようであり、覗きに行ったところなんと偶然にもカニを食べているではないか!

なんでも母の日ということで、母親とお婆ちゃんとご馳走を食べているのだそうだが、この偶然(ビッグウェーブ)に乗るしかねえ!ということで「カニを食べている動画を見てカニの歌を歌っていたのを思い出しました」的なことをタイ語に翻訳してコメントしたところ、本人から「arigatou 😍」との言葉を頂戴した。すっかり大人になった彼女達であったが、謎のアイドルソングを歌ったことは覚えていたようだ。