ガラパゴスからの船出

時代の潮流から随分外れた島に浮かぶ音楽ブログです。お気に入りの曲(2000年代後半が多め)の感想や好きな部分をひたすら垂れ流します。

ザ・キング・トーンズ/夢の中で会えるでしょう

ザ・キング・トーンズといえば「グッド・ナイト・ベイビー」が有名だろうか。リアルタイム世代ではないが、様々な歌番組で歌われていたから、追っかけていなくても耳に馴染んでいた。

 

そんなキングトーンズには他にも名曲があって、その一つがこの「夢の中で会えるでしょう」だ。

この動画にある通り、高野寛氏が提供をした曲である。キングトーンズ35周年を記念してリリースされたもので、すでにリーダーの内田正人氏は還暦近い年齢になっているが、この美声をキープしているのだから凄いものだ。

 

この曲を一言で言えば「芳醇な愛」だと私は思っている。徹頭徹尾愛の歌なのだが、叫ぶ愛でも縋る愛でもトキメキの愛でもない。愛の幸福に浸り、溜息のように紡がれるものだ。歌詞を読む限り「僕」と「君」は愛し合っているのだが、距離が離れている。しかし「君」のことを想い歌い、また手紙を書くだけで幸せな気持ちになるというものだ。深く深く、自分の心の中でじんわりと愛を温めることの芳醇な様がたまらない。

 

そしてこの素敵な歌詞を乗せる曲がまたとんでもない。バンド編成にエレピとストリングスが入るミドルテンポの曲だ。キングトーンズ自慢のコーラスグループがすごい良いところで入るんですよね。イントロとBメロ、サビの後半と、コーラスが入るのは限定的な部分でしかないのだけれど、丁度欲しいところでビシっとキメてくる。

 

イントロのコード進行は高野氏自ら言及している通り、キングトーンズに提供されるはずだった、シュガー・ベイブの「DOWN TOWN」のコードをオマージュしたものとなっている。

 

高野氏といえばシティポップのミュージシャンで、キングトーンズは時期にもよるがドゥーワップに歌謡曲を落とし込んだグループだ。彼らの音楽は全く別のジャンルのようであるが、混ぜてみたら上質なポップスになってしまったのだから、音楽というのはわからないものだ。

 

何よりデビューから35年経ってこんな名曲を歌い上げるザ・キング・トーンズが、いかに化け物じみたグループなのかがよくわかる。

 

ちなみに動画では聴こえないのだが、CD音源で二番のサビ後の間奏で聴こえてくる、アタックが少しずれた、リバーブがたっぷりかかったパーカッションの正体がわからない…。