ガラパゴスからの船出

時代の潮流から随分外れた島に浮かぶ音楽ブログです。お気に入りの曲(2000年代後半が多め)の感想や好きな部分をひたすら垂れ流します。

Rie/Never looking back ~透き通る心で

2008年の4~6月に放送された「クリスタルブレイズ」というアニメがある。「大人も楽しめるアニメ」をテーマに、構想から実に5年の月日をかけて生み出された作品だ。現実に挫折した人々が集まる「ラグス・タウン」という街を舞台にして、主人公が仲間とともに活躍するハードボイルドなアニメなのだ。

 

このアニメはとにかく設定や登場人物がオシャレ。主人公のシュウは元刑事だったが、巨大権力に立ち向かったことで社会的に抹殺され、この街に流れ着いた。男前でクールな性格であり、毎日様々な女性の元を泊まり歩いている。そして銃の扱いに長けており、決める時は決める。彼が経営するS&A探偵事務所では、彼を慕ってやってきた弟分のアキラや、高校生のマナミやアヤカも加わり、賑やかな毎日をすごしていた。近所には闇医者の“先生”や、気さくな情報屋のヨブさん、ラグス・タウンを裏から監視するポリリンちゃんなど、一癖あるキャラクターが住んでいる。

 

そんなある日、行方不明になった少女達がガラスになって発見される「ガラス事件」が発生。マナミとアヤカが首を突っ込んだところ、謎の組織の車から少女が発見される。この少女を躍起になって取り戻そうとする組織の人間達。助けを求める少女“サラ”をシュウ達は守っていき、そこから両者の駆け引きと戦いが始まっていく…という物語だ。詳しくは昔私がネット上に書いた記事を見てほしい。

以上があらすじなのだが、正直あまり面白くなかった。ガンアクションを謳っている割にあまりアクションシーンはないし、話のテンポが凄まじく悪いし、クールというと聞こえはいいのだが、主人公のシュウは基本的にやる気がないので色んな事件を未然に防げず全てが後手に回って、なにもしないくせに悔しそうな顔をするし、マナミはメチャクチャ空気が読めず暴走してはみんなに迷惑をかけるのだが、そのくせアヤカに「空気読めないよね」とか言うし、もう世界観にだけステータス振って力尽きたような作品だ。じゃあなんでそんな作品を全部見ていたかといえば、ここまでチグハグなアニメをどう終わらせるか気になったからだ。オチもオチで作中の謎を明らかにせずに終わっていたりと、いやいやそこ語れよとモヤモヤしたまま終わったのであった。

 

そんな隠れた凡作「クリスタルブレイズ」であるが、主題歌はとにかくカッコよかった。本当にこのアニメは世界観と主題歌だけにステータスを振り切っていた。

渋いトランペット&サックスと甘いフルートの音が特徴的なジャズ・フュージョンである。イントロから入るピアノも感情的なうねりを見せ、エレピとギターの音が優しく語り掛ける。ウッドベースとドラムが複雑なフレーズを奏でて曲のオシャレ感に華を添えるところも素晴らしい。なんというかこれ「ルパン三世のテーマ'78」とか「Tank!」なんですよね。本編もたぶんルパンやカウボーイビバップみたいなやつをやりたかったから、主題歌も気合い入れてこういう感じにしたのだろうと。でも本編がね…。

 

歌詞はカッコいい。人生に挫折して下を向いて生きている人に「始めよう いつも透き通る心で今を生きていこう」、「想い出ならばこれから作る 振り向かないで前を見て」と手を差し伸べる。全編通して優しく励ましてくれる応援ソングなのだ。高層ビルが立ち並ぶ都会では、自分の存在はちっぽけに映ってしまう。それをこの歌では「あのビルの隙間の空を見上げて少しずつただ歩き出す」と言ってくれる。ビルとビルの間に少しだけ映る空。どんな場所にも見方によっては希望はあると教えてくれる。力強い歌である。

 

ちなみにこの曲を歌っているRieという歌手も素性が不明であり、この曲しか歌っていないのだ。一体どこの誰を連れてきたのだろう。もしかしてヒロインのサラもどこから来たかわからない謎の少女だったので、同じ感じにしたのだろうか…。