ガラパゴスからの船出

時代の潮流から随分外れた島に浮かぶ音楽ブログです。お気に入りの曲(2000年代後半が多め)の感想や好きな部分をひたすら垂れ流します。

リュ・シウォン/Cafe Wonderland

2009年の3月、学生だった私は今考えると羨ましくて血の涙が出るぐらいヒマを持て余していた。ネット環境もなく、友人とたまに遊ぶ以外はシンセサイザーを弄っているという、時間の概念などとうに忘れた生活を送っていた。そんな中ふとテレビをつけた時に出会った昼ドラがTBS(居住地的にはMBSだが)「おちゃべり」である。

平日の13:30~14:00に毎日放送されていた30分ドラマで、「コーヒーの味もケーキの味も全て普通。でも来るとなぜか悩みが解決しちゃう不思議なカフェ『cafe南風』」を舞台に繰り広げられるコメディだ。ドラマの舞台はずっとカフェの一室で、楽しそうにおしゃべりをする常連三人組の元に、毎回ゲストがやってきて自分の悩みを打ち明ける…というもの。その悩みというのも「夫の携帯見る?見ない?」「妻の出産、立ち会うべき? 一人で産んでもらうべき?」のようなものであり、つまりターゲットである主婦層が共感するようなテーマで毎回ドラマが進むのだ。

 

正直具体的な内容は覚えておらず、映像ソフト化もされていないため、ドラマの詳細を思い出すことは不可能に近いが、その主題歌だけはハッキリと覚えている。それがリュ・シウォンの「Cafe Wonderland」だ。実はこのドラマ、EDテーマが流れた後に「今日のささやき」という、夫に言ってもらいたいことをリュ・シウォンに言ってもらうワンコーナーがあった。主題歌を歌っているミュージシャンが視聴者に毎回違う言葉を囁くドラマなど、後にも先にも「おちゃべり」しか知らないが、需要があったのだろう。

カフェっていうより、レストランやバーなんだよなあ…

そんなサービス精神旺盛なリュ・シウォンがなぜか日本語で歌うこの曲は、ウィンドチャイムと彼の囁くような甘い声から始まる。ティンパニーの音やシャッフルビートの軽快なリズムが、カフェに来るウキウキ感をよく表している。

 

Aメロは音がセンターに集まっているが、「閉じてた羽広げる時が来たのを知る」という歌詞が終わりBメロへ移ると同時に左右に音が広がる。またコーラスを多用しており、シウォンの優しい声がコーヒーの香りのように耳の中で漂うところも良い。

 

歌詞はひたすらにカフェで「君」とすごせるこの時を感謝する歌だ。それはもはや恋ではなく、付き合いの長いカップルや夫婦の落ち着いた愛の歌であると私は思っている。

 

このドラマの放映から14年。シウォンが「未来の方角へみんな歩き出してる」と歌っており、私自身当時からすればとても遠い所に歩いてきたものだなと、しみじみと感じている。今日から2023年。「素晴らしい出来事が」待っていてくれるといいなあ。