ガラパゴスからの船出

時代の潮流から随分外れた島に浮かぶ音楽ブログです。お気に入りの曲(2000年代後半が多め)の感想や好きな部分をひたすら垂れ流します。

石田燿子/乙女のポリシー

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私が見たセーラームーンシリーズの中で最も古いものは、セーラームーンRである。正直昔の記憶すぎて、どんなストーリーであったとか、どんなキャラがいたかとか、ほぼほぼ全く覚えていない。セーラームーンセーラープルートにどこでもドア的なもので救われていたとか、ラスボスがワイズマンという名前だとか、部分的に何かを覚えているところもある。しかしED「乙女のポリシー」だけは今でも忘れられない。

この映像だけで当時にタイムスリップできる

イントロはストリングスとベル系を混ぜたような、ロマン溢れるシンセの音から始まる。そこにスライドしながらカットインしてくるゴリゴリのエレキギターは、腕白な強さをイメージさせる。そして最も象徴的な音こそ、歯切れが良く元気さ満点のシンセブラスのような音色。ロマンと強さと元気とは、まさにセーラームーンこと月野うさぎを象徴するキーワード。つまりこのイントロだけで主人公を表してしまっているのだ。

 

続くAメロでも元気な音が続くが、「そうよそれが」から可愛らしいグロッケンの音が響くのが素敵。歌詞はひたすらにまっすぐで、一点の曇りもなく爽快な女の子の気持ちを表している。コードも1小節目と3小節目で同じメジャーコードを堂々と鳴らし、他の小節で使われているマイナーコードも、セブンスコードが多いため全く暗く聴こえない。そして地味ながらもこの元気よさを支えているのが、8分音符で小気味良くビートを刻んでいるシンセベースである。基本的に同じ音を弾いているだけなのに、ギターのカッティングと合わさって足取りの軽さが窺え、EDの映像をしっかりとサポートしている。

 

Bメロは最初の4小節で少しビートが変わり、タムが複雑に鳴り響く。歌詞は「ツンと痛い胸の奥で」の部分。今まで順調に鳴ってきたビートが変則的になり、それはまるで恋の切なさを語っているかのようである。ED中のうさぎも歩みを止める。しかしそれはネガティブな不安ではなく、新しい世界へ歩み始めるための準備だというのが、後半4小節でわかるだろう。

 

何よりサビの無敵感がヤバイ。コードのほとんどをE♭とA♭で占める強気な姿勢は、歌詞の通り「コワイものなんかないよね」である。それでいて全く飽きさせないメロディであるし、当時の曲で永井ルイ氏が多用していたコーラスと上手くマッチする。イントロのシンセブラスも帰ってきて、追い風を生み出している。それだからなのか、サビのうさぎの歩みは速くなる。最後の「ピっと凛々しく」の語感と歯切れの良さは、この曲で一番好きな部分だ。他にも2番の「みんな本気のときがとってもきれいだから」「涙もたまにあるよね」など、大人になってから喰らうパンチラインが揃っているのも魅力である。

 

この曲について記事を書こうと思って動画を探そうとしたら、こんなものに出会ってしまった。

これはもうズルいって。当時の乙女たちを泣かせにかかっている。いや、たまにはこれを見て涙を流してもいいのだろう。その後ピっと凛々しく生きられるのなら、それが乙女のポリシーなのだ。