ガラパゴスからの船出

時代の潮流から随分外れた島に浮かぶ音楽ブログです。お気に入りの曲(2000年代後半が多め)の感想や好きな部分をひたすら垂れ流します。

tacica/神様の椅子

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tacicaと出会ったのも、スカパーの深夜のPV垂れ流し番組。一耳で「おっ?」となるバンドだった。

 

この曲もそうなんだけど、tacicaの曲は歌詞も曲調もかなり独特。声の出し方や歌詞の世界観はどことなくBUMP OF CHICKENっぽい。しかし“厭世的な人間賛歌”といえば伝わるだろうか。儚げで悲観的であるのに、それでも人間の温かさを信じている力強さが感じられるのが彼らの曲の強みなのだ。夜明けのまだ暗い部屋の中で、仄かに灯りをつける蠟燭のようなイメージ。

 

この「神様の椅子」も、漏れなくそのtacica節を感じられる一曲だ。

コードはシンプルなものを多用しているが、不思議なメロディーである。サビが顕著で、盛り上がらなさそうで盛り上がるのだ。サビのほとんどがセブンスコードで、こちらの感情の持っていきかたがあやふやで不安定になっているのかもしれない。でもメロディーラインは美しく、そこにボーカル猪狩氏の力強い声とメッセージが入ってくるため、感情に名前をつけるのは難しくても、昂りの渦に飲み込まれていることはわかるのだ。16ビートで叩かれるスネアや時折うねり散らかすベースラインなんかも、その昂りを助長する。

 

歌詞については、ペシミズム溢れる視点で神様に皮肉を言っているようにも聞こえるが、神様に対する気持ちは固まっておらず、やはり不安定だ。カラフルな言葉を使っているのに、心はマットな無色というか。しかしながら希望をどこかに持ち続けている部分がやはり隠し切れない。この不安定な希望を歌うところに、学生時代の自分は惹かれたのだろう。

 

そんなわけでtacicaの世界に入っていったのだが、私がかつてネット上で親しくしていた人に、tacicaのファンの方がいた。その方には私の書いた初期の曲のイラストや動画を作っていただき、ポップで可愛い世界観の後押しをしていただいた。その方があるつぶやきを境に音信不通になってしまった。

すでにネットの世界から見えなくなった方の過去のツイートを掘り起こすというのも良い趣味ではないかもしれないが、大変お世話になった方なのですごく寂しくて、今でもこうして覚えていたりする。元気でいらっしゃればいいのだが、神様の椅子からはその様子がわかるのでしょうか?