ガラパゴスからの船出

時代の潮流から随分外れた島に浮かぶ音楽ブログです。お気に入りの曲(2000年代後半が多め)の感想や好きな部分をひたすら垂れ流します。

SAWA/サムデイ

BGMが素晴らしいゲームを一本挙げろと言われたら、真っ先に私が挙げるのが「すばらしきこのせかい」だ。2007年にニンテンドーDSで発売されたこのゲームは、コレクション要素のあるバッジの能力をタッチペンで操る、爽快感のあるアクションが魅力のゲームだ。言葉で表現すると難しいので、これはやってみないとわからないだろう。ちょっと他にないタイプのジャンルである。

これはSwitch版なのでプレイスタイルは当時と随分変わっているが

そしてこのゲームを名作たらしめる要素としてBGMが挙げられる。コンポーザーの石元丈晴氏はディレクターから「渋谷の街並みを歩いている時に聴こえてきそうな曲」を求められた。これに対し石元氏は内臓音源で曲を作るのではなく、ボーカルを入れたもので応えたため、ボーカル曲を想定していなかったディレクターは驚いたものの、その完成度の高い曲に惚れこんで、ムービーを削ってまでBGMに容量を割いたそうだ(という話をサントラのブックレットで見た覚えがある)。案の定私もそのBGMの数々にやられ、戦闘が楽しみで仕方なくなってしまったわけである。

 

そんな私が一番好きな曲が、この「サムデイ」だ。

 これが通常戦闘曲の一つなんですよ…。こんな曲の中で暴れられるわけですよ…。テンションが上がるしかないじゃない!っていう。

 

イントロとAメロは同じコード進行が続く。1~2小節目はト長調なのだが、3~4小節目でいきなりヘ長調に転調し、またト長調に戻る。BメロもCとB♭のコードをいったりきたりする。ちょっとヤンチャなティーンが街をフラフラと遊び歩く、不安定だけれどキラキラした青春の世界を表しているような、コードの移ろいである。

 

ところがサビに来たら一転、王道のコード進行に変わる。「3、2、1、差し込む光」や「いつか笑ってみせる」と歌詞にあるように、不安定な少年少女たちに希望が垣間見えた様子を、あえてベーシックなコードで表現しているのかもしれない。

 

作中の主人公たちも死神のゲームに参加し、魂が消滅しかねないシリアスな展開に身を投じるのだが、仲間たちとの絆が生まれたり、渋谷の雑然とした街並みを楽しんだりと、不安定ながらも精一杯生き抜くストーリーになっている。人気投票をすると同作の「Twister」という曲に敵わないのだが、このゲームを象徴する最高のBGMが、個人的には「サムデイ」なのだ。

 

ちなみにヨシュア編のボスである南師戦(通称ゼタ様)でもこの曲が流れてくる。「え?ボスなのに通常戦闘曲なの?」と思ったら、英語版が流れてきて鳥肌が立った。

ボス戦の緊張感と、サムデイの英語版のカッコ良さ、そしてゼタ様の「ゼタおせぇんだよ!」という中毒性のあるキャラクターが相乗効果を生み、ものすごいハイテンションでゼタ様に挑んだことは、14年経った今でもよく覚えている。