ガラパゴスからの船出

時代の潮流から随分外れた島に浮かぶ音楽ブログです。お気に入りの曲(2000年代後半が多め)の感想や好きな部分をひたすら垂れ流します。

アンティック-珈琲店-/覚醒ヒロイズム〜THE HERO WITHOUT A 'NAME'〜

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私が初めて見た深夜アニメ、それが「DARKER THAN BLACK -黒の契約者-」である(以下DTB)。何の気なしにテレビの電源を入れると、MBSの小さな情報番組で芸人が「これから放送する注目のアニメ」みたいなものを紹介するコーナーをやっていた。そこである芸人が紹介していたのがDTB。深夜にアニメなどやっていないような田舎から移住してきた私は「へえ、関西では深夜にアニメがやっているのか。面白そうだな」と見始めたが最後、私はその地味だが硬派で人情味のあるアクションアニメの虜となった。

 

そのDTB一期の主題歌は二曲ある。一つはabingdon boys schoolの「HOWLING」。そしてもう一つがアンティック-珈琲店-(以下アンカフェ)の「覚醒ヒロイズム〜THE HERO WITHOUT A 'NAME'〜」である。このブログで話をする時は、出会うきっかけとなった曲から取り上げるが、あえてこちらを先に書きたい。それぐらい中毒性のある曲だからだ。

abingdon boys schoolといえば西川貴教率いるバンドだ。その歌唱力は凄まじいものがあった。そしてその後を担当するバンドは誰だ…?という時に出てきたのがアンカフェだ。当時ネットでネタにされまくったことをよくよく覚えている。西川氏と比較される歌唱力。「最後のガラス」という意味のわからない単語。OP映像でなぜか何人もいる主人公(本編でそんなシーンはない)。何人の視聴者の頭にクエスチョンを浮かべたのだろうか。しかし私はテンションが上がった。「なんてカッコいいOPなんだ!」と。この曲に変わった辺りからストーリーも徐々に核心へ向かって動き始め、毎週放送を楽しみにしていた頃だった。この曲調とその時の私のドキドキ感はシンクロしていたのだ。

 

さてこの曲はスルメ感があったようで、なんだかんだ言いながら今もネット上で愛されている。2ちゃんねる(現5ちゃんねる)でOPのAAが作成され、数年後の「今日は一日アニソン三昧Z」で覚醒ヒロイズムがリクエストされた瞬間、すごい勢いでAAが貼られまくったことをよく覚えている。大変に笑わせてもらった。

この曲をカラオケで歌う際は、周りの皆と一緒にガラスを割るポーズをしながら歌う。それぐらい盛り上がる曲である。AAの力だけではなく、この曲の持っているポテンシャルが高くなければ起こらない現象だ。

 

今だからこそ言える話が二つある。一つはアニヲタWikiというサイトの話だ。このサイトに「最後のガラス」というふざけた項目を作ったのは私だ。

二つ目。大学の講義で英語を取っていた私。そのクラスでは一冊の本を半年かけて翻訳していくのだが、どうにも皆やる気がない。前期の最後、先生は「それではこの本を訳して要約してください」などと言い始めた。先生なりの復讐だったのだろう。慌てた私だが「いや、和訳本探せばいいじゃん」と、本をAmazonで急いで取り寄せることにした。しかし当時は一定以上買わないとお急ぎ便が安くならなかったのか、ただ単に送料がかかったのか忘れたが、その本だけでは条件を満たさない。そこでこのCDを買ったのだ。それだけなら特に問題はない。

 

このCDにはアニメを使ったPVがついてきた。これが非常によくできていた。しかし残念だったのは私の視聴環境。15インチのテレビでは迫力に欠ける。ふと思い出したのは祖父母の家の環境。私の祖父は50インチのテレビを持っていたのだ。実家に帰った時、祖父のテレビで見ようとDVDを持っていった。DVDプレイヤーがないか物置を探した時、見たことのないDVDケースが出てきた。さてこれはなんだろうと思い開けると、そこには人妻モノのAVがあった。私はそっとケースを閉じた。世界が逆に回転した。

 

話を戻そう。このアニメを見たことで、私は渋くて暗くて本格派のアニメを好むようになった。当時はGUNSLINGER GIRLやらペルソナ-トリニティソウル-やらシゴフミやら黒塚やらゴルゴ13やら、そんなアニメが流行っていたのか、私はそちら側ばかりを見続け、ダウナーな気分になっていた。周囲が萌えアニメを見て「こないだの〇〇ちゃんカワイイよね!」とか言っている中「ゴルゴのあの狙撃角度はヤバイよね」などと言っていたので、全く話が合わなかった。すっかりアニメを見なくなったが、今でもDTB三期を待っている。私のガラスが割れる日が、まだ来るに違いないと信じた光を守り抜いている。コロナが去った暁には、カラオケに行ってまた皆でガラスをぶち破りたいものだ。

The Fratellis/Chelsea dagger

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私の最も愛する洋楽バンド、それがThe Fratellisだ。非常にわかりやすいブリティッシュロックで、シンプルな編成ながら少しチャラくてポップな曲調。とってもゴキゲンな世界観を作るミュージシャンだ。

 

さてそんなFratellisと私が出会ったのが、Chelsea daggerという曲。

まずこのシャッフルビート。ブギ感あふれるザクザクとしたギター。所々で聞こえてくる叫び声。サビのスキャット。酒の勢いで作ったんじゃないかというぐらい陽気な曲だ。歌詞の意味はわからないが、PVを見る限りちょっとエロティックなものなのだろう。そんなことがどうでもよくなるぐらい、この曲調が良い。

 

「Chelsea dagger」が収録されている「Costello Music」というアルバムが彼らの最高傑作だと私は思っている。「Cuntry Boys & City Girls」とか「For the Girl」とか、ハイセンスな曲が勢ぞろいな一枚だ。ところが二枚目からはセルフプロデュースになったらしく、自分たちのやりたいことを追求するようになったのはいいのだが、いささかトーンダウンしたのは否めない。

 

このバンドから私は他のイギリスのバンドを探すようになり、そういった意味でこの一曲も私の中の大きなターニングポイントとなったものであった。ただカラオケで歌うのが難しく、知ってから15年経つが未だに歌えていない…。

DragonForce/Operation Ground and Pound

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特に意識しているわけではないが、私の好きな洋楽ミュージシャンのジャンルとしてはブリティッシュロックが多い。そしてDragonForceもまたイギリスのバンドなのだが、果たして彼らをブリティッシュロックと呼んでいいものなのか…

 

私がパワーメタルに興味を持ち始めたのはDragonForceのがきっかけであった。ラウド系のPVを集めた番組で偶然見つけ、高速ブラストビートとメロディアスな曲調、変態的なテクニックのギターソロ、なんだかわからないが壮大な世界観など、今まで知らなかった風景がそこには広がっていた。 音楽好きな友人とこのPVを見て、二人そろって「ヤベエ…」と呟いていたことをよく覚えている。

厨二病を極めたカッコよさというのは、ビジュアル系だろうと私は思っていたが、別の道にもそのカッコよさがあった。ここまで爽快にドラマチックなカッコよさを突き抜けられると、もう賞賛の言葉を贈るしかない。

 

DragonForceの楽曲には日本を意識したものがあり、何度も来日している彼らは日本との繋がりも深い。PVではカットされているが、この曲のイントロでは二胡らしき楽器が使われていたり、メロディがどこか東アジアテイストだったりと、ブリティッシュなメタルとは言い切れない要素が見られる(作曲はSam Totmanだし、元々彼らはドイツ寄りのメタルな気もするが)。そもそもこのバンド自体が多国籍なメンバーで構成されており、それぞれの要素をメロディアスとスピードという柱に集中させると、彼らの音楽になるのだろう。

 

DragonForceを知り、私はパワーメタルを聴くようになり、またパワーメタルを作る時に彼らの世界観を参考にするようになった。現在のDragonForceは当時とはメンバーの大半が変わり、新しい曲調や短めの曲にもジャンルを広げるようになった。当時の曲調を知っている人間からすると少しパワーダウンした感は否めないが、それでも今も彼らのスピードを追い続けている私がいる。いくつになってもあのカッコよさを懐かしみ、追い求めてしまう。それがDragonForceの魅力なのだ。

マキシマム ザ ホルモン/恋のメガラバ

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初対面の人とカラオケへ行き、最初に歌うのが大体マキシマム ザ ホルモンの曲。知っている人からも知らない人からもウケる鉄板ネタである。

 

このバンドとの出会いも、深夜のスペースシャワーかMTVのPV垂れ流し番組だったはず。その時流れていたのが「恋のメガラバ」である。初めて見た時の私は、PVに出てくるメガネ君みたいな表情になっていたと思う。

「重厚な音の割にポップなサビで、ダンサーがエキゾチックでカワイイなあ」とか思っていたら、壁が破れてメンバーが登場。突然メタルコア調になる。デスボイス&シャウトの何を言っているかわからない歌詞。聴いたばかりの私は「この曲、デスボイスがなければいいのになあ」等と宣っていた、とんだ甘ちゃんだったことを覚えている。

 

この曲は構成が非常に美しい。ポップな曲調をブチ壊してハードに暴れ、一通り暴れた後に少し落ち着いたリズムになる。四つ打ちのキックに8ビートで刻むギター。それが8小節続いた後はモータウンビート(こんなにハードなものは聴いたことがないが)で綺麗に揃え、徐々にボルテージを上げていく。何よりこの16小節は全ていわゆる「小室進行」であり、J-POPの要素が入ってポップさが次第に蘇っていく。ここでサビに戻らず、まだメロを16小節も挟む。サビへ向かってつまみをひねるように盛り上がりを見せていく構成は、見事としか言いようがない。サビのグルーヴがこれまたダンサブルで、踊れるロックにきちんと仕上がっている。確認したことはないが、ホルモンの作曲担当であるマキシマムザ亮君は、リフ先行で8か16小節作って、これを組み合わせて曲を作っているのではないかと思っている。

 

とにかくこの曲でホルモンを知った私はアルバムを集め始め、何を勘違いしたのか「これカラオケで歌ったら盛り上がるんじゃね?」と考え始め、大学へ行って同じ授業を取って仲良くなった友達や先輩たちの前で「恋のメガラバ」や「包丁・ハサミ・カッター・ナイフ・ドス・キリ」を歌い始めた。彼らもまたPVのメガネ君みたいな表情をしていた。「ご満悦プレイ」とはまさにこのことだったのかもしれない。ただ歌ってみればウケは非常によく、カラオケの空気は狙い通り盛り上がったし、この曲をきっかけに仲良くなった人もいた。そもそもこの曲の歌詞自体が、開放的になっていく人の様子を歌っているので、少し前までカラオケに抵抗のあった私自身とシンクロした部分があったように今は思う。

 

ところで亮君は、すかんちのファンらしい。「恋の…」で始まる曲はすかんちを思わせるが、彼らの曲で使われているギターソロを匂わせるフレーズが、「メガラバ」の最後に使われていたりする。

亮君によるすかんちへの非常に強いリスペクトの念を感じる。受け継がれるサンプリングに対し、ROLLYは大変に喜んだとか(そもそもROLLY自身が、敬意を持って洋楽のサンプリングをするミュージシャンである)。

 

恋のメガラバに始まった私のホルモン愛は、今もまだ続いている。惜しむらくはアルバムリリースの間隔が非常に長いこと。YouTubeを見る限り色々な企画に精を出しているが、個人的な意見としてはアルバムを早く出してほしかったりする。それでも私は待ち続けるぞ…!

般若/理由

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私がヒップホップと出会ったのはSOUL'd OUTだったが、ハードコアなラッパーの曲を聴いたのは、般若の「理由」が最初になる。

私はそれまでラップというものを全くといっていいほど聴かなかった。メロの構成がしっかりしていて、サビに向かって盛り上がっていくような曲が好みであり、同じフレーズを使いまわす曲の良さが理解できなかったのだ。そんな中、いつものように深夜のスペースシャワーのPV集を漁っていた時、ヒップホップ特集が放送されていた。ヒップホップに興味がない私がこんな特集を見ていたということは、たぶんSOUL'd OUTのPVでも探していたのだろう。もちろん彼らの曲のPVは出てこず、なんとなく流し見していた時に、般若の曲が流れてきた。そこでカッコよさに引き込まれたというわけだ。

 

まずわかりやすい不良文化。私の地元の中学は、校名をggると「ヤンキー」と第二検索用語に出てくる地域ではあるが、如何せん田舎だったので都会のワルさとは無縁だった。このPVに映る人々は、まさに都会のヤンキーであり(もはやヤンキーに留まらないようなものも映っているが)、「いやいや、こんなものがあったのか…」とまるで高いビルを下から見上げるような錯覚を覚えた。まさに「MOST PSYCHO 悪の映像」である。

 

トラックとしては、ディストーションの効いたエレキギターや、アコースティックドラムの音をサンプリングしたであろうビートなど、生楽器の音色が目立つ。これにより般若のラップの不気味さと威圧感を増長させる曲調となっている。

 

こういった歌詞を聴くのも初めてのことだった。真夜中にライブに来た客のボルテージを上げるような、それでいて部屋で一人で叫びだすような切なさも感じる不思議な歌詞だ。最後のフックの前の「止まれねえんじゃねえ、止まらねえ」なんてところは、今でも脳内でたまに呟きたくなるパンチラインだ。

 

ここから私は般若のCDを集めだしたが、その頃はまだラップの良さをいまいちわかっておらず、盛り上がりに欠ける構成に首を傾げた。しかしある程度他のラッパーの曲も聴いていくうちに、般若のアルバムの質の高さに気づかされたのであった。般若のアルバムは「おはよう日本」と「根こそぎ」が“オラオラ期”のもので、「ドクタートーキョー」以降はソリッドでストイックな作風になっていき、この「内部告発」はその過渡期であり、割と異質な一枚であると私は思っている。個人的には“オラオラ期”の曲が好きなので「内部告発」自体あまり聴かないのだが、般若と出会ったこの曲は、私をイカレたショウへ連れていってくれたベストソングであるのだ。

フジファブリック/銀河

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私のカラオケデビューは随分遅かった。大学に入るか入らないかぐらいだった気がする。人前で歌うことに抵抗があり、なんだか恥ずかしかったのだ。しかし高校の同級生に連れられて一度行ってみると、これが面白い。以降色んな人たちとカラオケへ行っては、好きな歌を歌う楽しみを味わい、人の選曲に人生を感じて聞き入るなど、一つ遊びを覚えてしまった。そんな最初期の私がよく歌っていたのがフジファブリックの曲である。

 

このブログを始めて気づいたのが、チョイスするミュージシャンが、もはや活動していないor近況報告のない人たちばかりだった。わざとそうしているわけではなく、自分の人生のターニングポイント的な人たちを選んでいたら、たまたまそうなったのである。そんな中ここにきてようやく、今も活動しているバンドの登場である。

 

もっともこのバンドのフロントマンである志村正彦は2009年に急死している。そこからよく存続していると思う。志村死後のフジファブリックの曲は私も聴くが、やはり志村の書いた曲は凄まじかった。その凄さを一番わかっているのがバンドメンバーであるだろうに、今でも灯を絶やさないのがすごい。

 

カラオケにハマる1~2年ぐらい前に私はフジファブリックを知った。そのきっかけとなったのがタイトルの「銀河」という曲だ。

SPACE SHOWER MUSIC AWARDS 2006にもノミネートされていた覚えがある

一発で引き込まれる曲というのは、こういうものを指すのだと思う。曲も歌詞も不可思議感がハンパない。メロディーからなんとなく昭和歌謡っぽさを感じるのは私だけではないはずだ。それなのに編曲がオルガンを除いて全然歌謡っぽくない。チキチキとなるハイハット。ワウを効かせたギターは、これまた特徴的なリフを奏でる。サビのドラムフレーズは、あまりサビで聴かないタイプのグルーブだ。このアンバランスさが独特な違和感を生んで、曲の不可思議さを演出しているのだろう。

 

歌詞も何を言っているのかわからない。これは文字で見るとわかるが、擬音がやたら多い。歌謡曲なのに擬音だらけというのも面白い。小学生の国語の教科書に出てきそうな歌詞だと思う。口ずさんでみると妙に心地よいのだ。

 

そして何よりPVの奇妙さ。主人公の女の子をやたらと追いかける少女たち。彼女らは主人公を見つけると踊りだす。まるで意味がわからない。一体彼女たちはなんなのか。なぜ深夜2時すぎに踊りだすのか。これら曲・歌詞・PVの三つがそれぞれ高いクオリティの個性を主張した結果、見聞きする者に浮遊感を抱かせ、すなわちそれが宇宙=銀河だとでも言いたいのだろうか。だとしたら私はまんまと術中にハマってしまったことになる。よくもまあこんな曲を作れるものだ。

 

うろ覚えだが、この曲から私はフジファブリックを知っただけではなく、スペースシャワーやMTVなどで音楽を漁るようになったと思う。つまり私の中の音楽的ビッグバンを生み出した曲の一つでもあるのだ。

 

しかし私はあまり銀河を歌わない。「虹」とか「Sugar!!」とか「若者のすべて」とか「赤黄色の金木犀」とかのほうが盛り上がるからだ。この曲はカラオケのオールで皆が疲れてウトウトしてきた深夜2時すぎに、コッソリと歌うのに限る。ふと気づいた誰かがいたら、ソイツにだけ届けばよい。宇宙がまた一つ広がった瞬間だ。

装置メガネ/青春ナウ!

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爆笑オンエアバトルという番組があった。10組の若手芸人のネタを録って、観客がそれに票を入れて審査する。最後に票の多さを計って、上位5組を決める。そして実際にオンエアされる番組では計量のシーンから放送し、上位5組のネタしか流さないという、非常にシビアなお笑い番組だ。私は友人からそのビデオを貸してもらい、それはもうドハマリした。漫才やコントのセリフを諳んじられるほどに、だ。

 

この番組を毎週見ていた私だが、2004年に困ったことが起こった。これの音楽版をお笑いと交えて隔週で流すことが決まったのだ。つまりネタ番組を月に2回しか見れなくなる。「なんだよ、歌番組なんかどうでもいいよ」と、ひどくガッカリしたことを覚えている。

 

少し経ったある時、気まぐれに私はオンバトの音楽編である「熱唱オンエアバトル」というその番組を見てみた。そこに登場したのが装置メガネである。お世辞にも上手といえない歌唱力、ボーカルのよくわからない風貌、後ろにいる同じ髪型のキーボード。やたらピコピコしている楽曲。どうにもハイテンションな振り付け。全てがクエスチョンであった。ところがその曲「Television」は私の心を掴んで離さなかった(ということは、彼らは勝ち残ってオンエアされたのである)。

 

そしてしばらくして、次回予告で装置メガネが再び出演することを知った。そこで流れてきたのが「青春ナウ」という曲である。

この動画は別番組のものであるが、そのイメージは十二分に伝わるかと思う

一体何を歌っているのだろうか。青春のドキドキを伝えたいのはわかるのだが、如何せん情報量が多すぎてそれどころではない。しかし私の求めていたものはこれだったのだ。これをきっかけに私は、熱唱オンエアバトルを毎週見るようになってしまった。そしてそこからインディーズバンドへとのめり込んでいった。

 

装置メガネが私に与えた影響はもう一つある。それはテクノポップへの傾倒である。四つ打ちのバスドラム、バシっと鳴るスネアドラム。ピコピコしたシンセ音。露骨なまでのデジタルサウンドを心地よく感じる自分がいた。よくよく考えてみるとTommy february⁶にハマったのだから、テクノポップの音にも親近感を持つのも当然で、今思えば地層が重なっていっただけの話だ。その地層はいつの間にか私を構成する土壌となり、ここから石野卓球に入ってガチガチのテクノを知り、大学のバンドサークルでは「DISCO TWINSRYUKYUDISKOを聴いています」などという自己紹介をしてしまい、奇特な目で見られるようになったのだ。どう考えても私の分が悪い。

 

装置メガネはこの曲を含めたアルバムを引っ提げてメジャーデビューを果たした。正直メジャーのクオリティではなかったように今は思う。その一枚を最後にメジャーから撤退し、メンバーも脱退。今はボーカルのサミーちゃんが一人で活動しているらしいが、どうやって食べているのか、私は知らない。そんな装置メガネであるが、バリバリの打ち込みサウンドの良さを教えてくれたことに、私は今も感謝している。ナウではないものの、私の青春は確かにそこにあったのだ。