私がSMAPを認識したのは「がんばりましょう」という曲からなのだが、彼らの曲を知ったのは「笑顔のゲンキ」がきっかけである。
5人しかいないのに、6人の声が聴こえてくるのは気のせいだ
親か叔母か作ってくれたアニメのミックステープみたいなものがあり、当時の私はよくそれを聴いていた。その中にこの曲があったのだが、「これを歌っているのは誰だろう」などと思いもしない年齢の頃である。それでもこの曲のノリの良さに幼い私は惹きつけられた。
この曲はそれぞれのパートをソロで歌うこともなく、全員で同じメロディーを歌っている。当時のSMAPはメンバーの歌唱力もまだ成長期であり、全員で歌うことでそこを上手くカバーしている。
森浩美&馬飼野康二のゴールデンコンビによるこの曲の冒頭のサビは王道進行で始まる。サビに限った話ではないが、曲中ではシンセブラスのバッキングが元気よく鳴り、コーラスが美しく響く。Aメロはそのまま進むが、Bメロでファやソが一瞬ナチュラルになり雰囲気が変わる。C#7のコードになるあたりがピークで、「一瞬が永遠になる」というところから歌詞の通り世界が開けたようにメジャーコードに戻ってくる。
とまあ、曲についてはあまり書くことがないのだが、そこから十年以上が経って、この曲がSMAPの歌っているものだということを知った。初見補正がかかるからか、私はSMAPの中で1、2を争う名曲だと思っている。
そこから十年が経たないぐらいに、あることに気づいた。ミックステープに入っていた「笑顔のゲンキ」は、SMAPが歌ったものではなかったのだ。
そのテープの元になったCDがこれである。
このフザけたタイトルのCDは、当時のアニソン&特撮ソングを集めたものだが、権利の関係なのか本人が歌っておらず、カバーバージョンが数曲入っているのである。そして「笑顔のゲンキ」はターボレンジャーやジュウレンジャーの主題歌でお馴染みの佐藤健太氏が歌っていたというのだ。また原曲のカラオケというわけでもなく、オケも一から作り直しているようで、曲中で鳴っている音は原曲とは別の音である。
ではなぜ私は当時、原曲との違いに気づかなかったのか。まさか別のミュージシャンが歌うなど思いもよらないわけで、疑うことを知らなかったというのが最大の理由であるが、私の住んでいた地域ではテレビ東京系列が映らなく、タイアップアニメの「姫ちゃんのリボン」など存在を知らなかったので、原曲を聴く機会も当然なかったのだ。
好きな曲ができた→実はSMAPの曲だった→自分が聴いたバージョンはSMAPが歌っていなかった、という新しい君(ショック)に出会い続けたものの、今日も私はこの曲を聴くとゲンキが出るのだから、なんだかんだパワーのある曲だとは思う。そしてこういう初期の頃の曲を、年齢を重ねたSMAPが歌っているのを見ると、すごく感動するのである。たとえSMAPじゃない人の歌声で育ったとしてもだ。